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On the Production
by 井口健二
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■PUSH、男と女の不都合な真実、アンを探して、副王家の一族、携帯彼氏、脳内ニューヨーク+製作ニュース
は今後も期待できそうだ。
出演は、テレビドラマ『ブラディ・マンディ』などの川島海
荷、同『ゴッドハンド輝』の朝倉あき、さらに『ごくせん』
の石黒英雄。その脇を、小木茂光、星野真理、大西結花らが
固めている。
過去の名作から引いてきたようなシーンも随所にあるが、そ
れがちゃんと作品に填っている点も感心した。特に『P.S.
アイラヴユー』の名台詞が見事に再現されているのも嬉しか
った。

『脳内ニューヨーク』“Synecdoche, New York”
スパイク・ジョーンズ監督で2003年5月に紹介した『アダプ
テーション』や、ミシェル・ゴンドリー監督で2005年1月紹
介の『エターナル・サンシャイン』などを手掛けた脚本家の
チャーリー・カウフマンが満を持して挑んだ初監督作品。
物語は、仕事には恵まれているが家族関係に問題を抱えるブ
ロードウェイの舞台監督が主人公。彼には家族関係が破綻し
たところに名誉ある賞の受賞が知らされる。そこで主人公は
その賞金を使って巨大な倉庫の中に実物大のニューヨークの
セットを建設し、そこに彼自身のニューヨークを再構築しよ
うとする。
その舞台には彼の構想に賛同する多数の俳優が参集し、そこ
には彼自身の配役もあって、虚実が混交する舞台が作られて
行く。ところが彼の頭の中で膨らむ一方の作品には方向性が
見出せず、リハーサルばかりの状態が17年も続いてしまう。
そして虚実が混ざり合う中で出演者が死ぬ事態も発生し…
それに並行して主人公自身の姿も描かれて行くが、それもま
た壮絶な物語になって行く。
カウフマンの脚本は、先に紹介した作品でも虚実の境が曖昧
というか複雑な構成を採っているが、本作のそれはさらにそ
の世界が拡大している感じのするものだ。そこには前作以上
に多くの人物が関り、より壮大な物語となって行く。
しかし物語の本筋は主人公に関るものであり、その部分では
紛れもない男の人生のドラマが描かれる。その部分の明確さ
で観客は物語について行けるし、物語に違和感も感じさせな
いものになっている。物語の中で主人公は「天才賞」と呼ば
れる賞を受賞するが、正にこの脚本と演出もそれに値する作
品と言えるものだ。
出演は、主人公の舞台監督にフィリップ・セーモア・ホフマ
ン、彼を取り巻く女性たちに『マイノリティ・リポート』の
サマンサ・モートン、『ブローバック・マウンテン』のミシ
ェル・ウィリアムズ、『カポーティ』のキャスリーン・キー
ナー。
さらに『ウォーター・ホース』のエミリー・ワトスン、『パ
ッセンジャーズ』のダイアン・ウィースト、『未来は今』の
ジェニファー・ジェースン・リー、『アトランティスのここ
ろ』のホープ・デイヴィス、『ラスト・アクション・ヒーロ
ー』のトム・ヌーナンらが脇を固めている。
なおこの作品に関しては、今年2月1日付第176回のVES
賞候補の紹介の中でも触れている。残念ながら本作は受賞を
逃したが、再現されたニューヨークの景観などは流石に見応
えがあった。因に、これで同賞の今年の実写映画部門の候補
作品は全て日本公開されたことになるようだ。
        *         *
 製作ニュースは前回に引き続きリメイクの話題を2つ。
 まずは、前回も別の計画を紹介したばかりのブライアン・
シンガー監督で、1981年ジョン・ブアマン監督によるアーサ
ー王物語“Excaliber”をリメイクする計画が発表された。
 オリジナルは、岩に刺さった伝説の剣エクスカリバーを引
き抜いた少年が、やがて円卓の騎士を集めて国を治め、最後
は王の命を救わんとする魔法使いマーリンによる聖杯捜しか
ら死出の旅路に至る、正にアーサー王の生涯を描いた作品だ
った。しかもこの作品には、リーアム・ニースン、パトリッ
ク・スチュアート、ヘレン・ミレンらが出演していたことで
も今更ながら話題になっているようだ。
 そんな作品のリメイクだが、実はこの計画はシンガー監督
がニューラインで“Jack the Giant Killer”の企画を進め

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08月23日(日)
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