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On the Production
by 井口健二
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■恐竜ランド、ホースメン、女の子ものがたり、孫文、南の国のフリムン、Elic Clapton & Jeff Beck Live、白日夢+製作ニュース
と共に1968年にBlind Faithを結成したスティーヴ・ウィン
ウッドとの2008年2月に行われた、ニューヨークはマディス
ン・スクエア・ガーデンでのジョイント・ライヴの模様が納
められている。
共に還暦を過ぎの2人のミュージシャンを観に集まった観客
も正に熟年過ぎという人たちだが、その熱狂ぶりが微笑まし
い以上に、クラプトンの異常なまでの攻撃的ともいえる演奏
が見事に写し出された作品だ。
それは途中からキーボードに切り替えたウィンウッドに対し
て、執拗なまでに演奏でけしかける、超絶という言葉が正に
ピッタリの凄まじいテクニックの応酬で、それは音楽には部
外者の僕にも圧倒的な迫力で迫ってきた。
そしてもう1本は、ベックが2007年11月にロンドンのジャズ
・クラブで行った演奏の模様を納めた作品。こちらは、これ
が1本のギターから紡ぎ出されるのかと思うほどの多彩なサ
ウンドに溢れたもので、正にギターの持つ可能性を身を持っ
て体験させてもらえた。
それにこの作品では、ベックの優しさ暖かさも存分に描かれ
ており、特に2人の女性ゲスト歌手やクラプトンとの共演シ
ーンでは、一旦は完全に伴奏に下がりながら、必要なところ
ではその存在を示してみせる、その懐の深さにも感動した。
なお試写は、日本版のタイトル表記も字幕も一切なしのオリ
ジナル版で行われたもので、従ってここでも邦題なしで紹介
しているが、一般公開でMCなどに字幕が付くかどうかは不
明。と言っても大したことは話していなかったようだが。
ただし、本作は音響も充分に計算されて作られているので、
鑑賞にはできる限り音響の優れたスクリーンを選びたい。僕
はイマジカの第2試写室で鑑賞したが、最前列のシートでの
鑑賞は、正に圧倒的な迫力だった。

『白日夢』
谷崎潤一郎原作による官能戯曲の映画化。
同じ戯曲からは1964年に武智鉄二監督による映画化があり、
その作品は2006年8月に本サイトでも紹介している。そして
武智監督は1981年に自らリメイクを手掛け、その作品は日本
初の「本番」映画として話題を撒いたものだ。
今回はそのリメイク版でヒロインを務め「本番」女優として
名を馳せた愛染恭子が共同監督に参加しており、それなりの
リメイク作品ということにもなるもののようだ。
64年版については以前の紹介でも書いたが、そのファンタス
ティックな展開などは今観ても斬新に感じられるほどに時代
を超越している作品だった。その作品を、さらに過激にリメ
イクした作品の主演女優が今回は監督に挑戦している。
物語は、とある交番に勤務する警官が主人公。彼は勤務中も
夢見心地だったりする性分だが、ある日のこと空き巣の通報
で出動した彼の前に現れた被害者は、彼の夢に出てくる女性
にそっくりだった。
やがて歯の治療で訪れた歯科医院で看護婦を務める彼女に再
会した主人公は、治療の際の麻酔で寝ている間に再び彼女の
夢を観る。しかしそれはただならぬ内容のものだった。そし
て彼女から被害届の取り下げが申し出られるのだが…
主人公の妄想と現実が交錯するという構成は64年版と同様だ
が、本作ではそれがかなり現実的で、ファンタスティックと
いう感じには作られていない。それでそこをどう評価すれば
いいのかが悩ましいところで、正直には僕の守備範囲ではな
いという感じもした。
もしかしたら、監督以下の映画の制作者たちが極めて真面目
で、谷崎の原作を真面目に解釈したのが本作というところな
のかも知れない。脚本は、2007年瀬々敬久監督『刺青』や、
2009年木村祐一監督『ニセ札』も手掛ける井土紀州。共同監
督にはピンク映画出身のいまおかしんじが名を連ねている。
主演は、元ジャニーズJr.の大坂俊介と本作がデビュー作の
西条美咲。他に鳥肌実、小島可奈子、菅田俊らが共演してい
る。ただまあ、愛欲シーンでパンツを履いたままの男優には
多少がっかりした。
なお、本作の9月公開に併せて64年版、81年版及び87年製作
『白日夢2』の旧作3本のレイトショウ上映が東京銀座シネ
パトスで行われるようだ。

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07月19日(日)
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