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On the Production
by 井口健二
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■童貞放浪記、8月のシンフォニー、のんちゃんのり弁、花と兵隊、僕らはあの空の下で、キャデラック・レコード、30デイズ・ナイト
『キャデラック・レコード』“Cadillac Records”
1947−69年のシカゴを舞台に、黒人音楽を世間に広め、ロッ
クンロールやヒップホップの基礎を作り上げたチェス・レコ
ードの創始者でポーランド移民のレナード・チェスと、彼が
見出した黒人アーティストたちの姿を描いた実話に基づく物
語。
人種差別もまだ根強い時代を背景に、音楽を媒介にしてその
壁を取り除いて行った人々の姿を描く。そこでは、南部を旅
するときに敢えて黒人のスター歌手に運転をさせる、そうし
ないと白人と黒人の同乗を認められなかった…などの様子も
描かれる。
また、白人女性を舞台に上げたことが問題にされて逮捕収監
されたチャック・ベリのエピソードや、ユダヤ人のチェスが
黒人アーティストたちを家族のように面倒を見ながらも、金
銭面では搾取し続けた事実などが描かれる。
物語の中心となるレナードは、シカゴで廃品の回収業を営ん
でいたが収入は少なく同郷の成功者の娘との結婚もままなら
なかった。そんな彼が、一念発起して黒人音楽を演奏させる
クラブを開業し、黒人アーティストをスカウトし始める。
そこに南部のプランテーションからやってきたマディ・ウォ
ーターズや、ハーモニカ演奏の天才リトル・ウォルター、ソ
ング・ライターのウィリー・ディクスン、独自のスタイルで
ギターを弾くチャック・ベリ、女性歌手のエラ・ジョーンズ
らが集まってくる。
上でも書いたように基本的にはまだ人種差別が根強い時代、
黒人たちには読み書きのできないものも多く、そんな中でレ
ナードはヒット曲の代償には高級車キャデラックを与えるな
どのやり方で黒人たちの心を掴んで行く。
もちろんそんなやり方は、金銭的なトラブルの原因ともなる
が、一方で酒や麻薬に溺れて行くアーティストたちには、そ
れを食い止める役には立っていたのかも知れない。まあある
意味おおらかな時代の話かも知れないが。
出演は、『戦場のピアニスト』で史上最年少のオスカー主演
賞受賞者となったエイドリアン・ブロディ、『ブッシュ』で
はパウェル国務長官に扮したジェフリー・ライト、本作の製
作総指揮も勤めた歌手のビヨンセ・ノウルズ。
他に、コロムバス・ショート、セドリック・ジ・エンターテ
イナー、モス・デフ、イーモン・ウォーカーらがそれぞれ著
名な歌手の役で共演している。
アーカイブ映像で登場するエルヴィス・プレスリーと、リト
ル・ウォルターの1曲以外の楽曲は全て出演者自身が歌って
いるのも魅力的で、特にビヨンセの圧倒的な歌唱とモス・デ
フが楽しそうにベリを演じているのも面白かった。
『30デイズ・ナイト』“30 Days of Night”
厳冬の30日間太陽が顔を出さない極夜が続くアラスカ最北
部の町バローを舞台に、太陽光を恐れるヴァンパイアの集団
と町の住民の対決を描くグラフィックノヴェルの映画化。
原作はアメリカのIDW社から2002年に出版されたミニシリ
ーズのコミックスで、その時から映画化の情報はあったが諸
般の事情で映画化が実現したのは2007年。そのアメリカでの
興行は第1週に1500万ドル、第2週にも1000万ドルを超える
ヒットとなり、その後の全世界興収では7000万ドル以上を稼
ぎ出しているとされる。
そんな作品がようやく日本でも公開されることになった。
極夜の町でのヴァンパイアとの闘いを描く作品では、2007年
6月にスウェーデン製の『フロストバイト』を紹介している
が、設定を活かし切れていなかった欧州作品に比べると、さ
すがにハリウッド=サム・ライミの製作では一味違う作品に
なっていた。
その本作の主人公は、バローの町を守る保安官夫妻。しかし
性格の不一致からか妻は極夜を迎える最終便で町を離れると
宣言している。ところがアクシデントで彼女は町に戻ること
になり、ぎくしゃくした夫婦関係の中に恐怖の事件が襲来す
る。
以前に製作情報を紹介したときにも書いたが、ヴァンパイア
に極夜とは考えたもので、これに対する人間にはどのような
対抗手段が残されているか。それもまたその設定条件の中か
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06月07日(日)
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