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On the Production
by 井口健二
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■縞模様のパジャマの少年、幸せのセラピー、エル・カンタンテ、愛と青春の宝塚、セブンデイズ、アイカムウィズザレイン+製作ニュース他
の緊張感に観客も巻き込まれて、観客はあっという間に観終
えてしまった感じになるだろう。
その演出の緻密さは見事なもので、これを撮れる監督の手腕
には敬意を表したいくらいの作品だ。正直、観る方も相当に
疲れる作品だが、その疲労感も堪らない感じのもの。正に映
画を観たという感じがしてくる。
監督は2006年7月に『鬘』という作品を紹介しているウォン
・シニョン。前作のときにはちょっと批判的に書いたが、今
回は物語も含めて見事に完成されていた。
主演は、1999年のヒット作『シュリ』や2002年6月に紹介し
た『燃ゆる月』などのキム・ユンジン。最近ではアメリカの
テレビシリーズ『LOST』でも人気の韓国人女優が、その
合間に帰国して撮った作品とのことだ。
他に、2005年『南極日誌』などのパク・ヒスン、2005年『マ
ラソン』のキム・ミンスク、2006年『王の男』のチャン・ハ
ンソン、2月に紹介した日本映画『今度の日曜日に』に出演
のヤン・ジヌらが脇を固めている。
なお映画の中で、登場人物の1人がマザーグースに言及する
シーンがあって、それが気になった。これは単に引用しただ
けのものかも知れないが、何か特別な意味が持たされている
ような感じもして引っ掛かっている。真相は調べ切れなかっ
たが。

『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』
               “Je vien avec la pluie”
アメリカのジョッシュ・ハートネット、日本の木村拓哉、韓
国のイ・ビョンホン共演によるちょっと不思議な雰囲気の漂
うドラマ作品。
主人公はハートネット扮する元刑事の私立探偵。その探偵が
行方不明になった1人の若者の捜索を依頼される。その若者
はフィリピンで孤児の収容施設を運営していたが、ある日、
ゲリラに拉致されて行方不明になったという。
一方、香港ではイ扮するヤクザのボスが権勢を振るっていた
が、彼の子分の1人が現金とボスの女を連れて逃亡する事態
が発生する。そして、香港に現れた探偵の前で2つの事件が
交錯し始める。
と書いていると、何だか香港が舞台の暗黒街もののような感
じがしてくるが、物語はこの後、実は探偵には犯罪者の心理
に同化してその行動を先読みする能力があり、一方、行方不
明の若者は各地で奇跡を起こし始め…という展開になる。
しかも物語には、ポスターなどにも示されるように、十字架
が重大な意味を持ってくるような作品なのだ。もしかすると
題名にも特別な意味があるのかも知れない。
僕自身は宗教には何の思い入れもないし、この作品を観終え
ても、だからという特別な感想を持つものでもないが、これ
が宗教を信じている人にはどのように映るものか、ちょっと
気になるところだ。
その一方で映画には、かなりグロテスクなオブジェが登場し
たり、いろいろ凝ったところもあって、無宗教の自分にもそ
れなりに楽しめた。だからと言って宗教的な意味までは理解
できるものではないが、上っ面を撫でただけでも気の済むよ
うな作品でもある。
脚本監督は、ヴェトナム生まれだがフランスで教育を受けた
というトラン・アン・ユン。デビュー作の『青いパパイヤの
香り』から映画祭常連監督による4作目で、監督は次回作に
は村上春樹原作の『ノルウェイの森』を撮る予定だそうだ。
なお木村とイは、日本映画の『HERO』に続いての共演。
その木村は2004年『2046』に続く海外進出だが、消化不
良気味だった前作に比べて今回は、監督にいろいろアイデア
を出すなど、かなり積極的に映画づくりに関ったようだ。
特定の部分は抜きにして観ても、『2046』よりは解り易
い作品に思えた。
        *         *
 製作ニュースを1本。
 昨年10月1日付第168回などで紹介したマーヴェルコミッ
クス原作“Thor”の映画化に関して、主人公のThor役にオー
ストラリア人俳優のクリス・ヘムスワースと最終交渉に入っ
ていることが発表された。
 ヘムスワースは、今週日本でも公開される新版『スター・

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05月24日(日)
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