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On the Production
by 井口健二
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■フィースト3、ココ・シャネル、呪怨、ARTISANAL LIFE、未来の食卓、バッド・バイオロジー、ラスト・ブラッド(追記)+製作ニュース
監督は、フランスのケーブルテレビ局カナル+などの演出家
で、1990年代からドキュメンタリー作品を発表しているジャ
ン=ポール・ジョー。監督自身が癌を経験してこの作品を製
作したのだそうだ。

『バッド・バイオロジー/狂った性器ども』
                    “Bad Biology”
1982年製作のホラー作品“Basket Case”などで知られるフ
ランク・ヘネンロッター監督による新作。なおフィルモグラ
フィーによると、映画作品では1992年の“Basket Case 3”
以来、16年ぶりの発表だそうだ。
7つのクリトリスを持つ女性と、ステロイドの注入などで自
分のペニスを巨大化させた挙げ句にそこに自意識が芽生えて
いるらしい男性。そんな2人が、互いに究極の相手を見つけ
るまでの行状が描かれる。
まあ、上記の説明から明らかなように、ある意味究極のエロ
グロナンセンスの世界が展開される作品だ。それを笑って観
ていられるかどうかは観客の勝手だし、それなりに笑って観
られる人にはそこそこの満足が得られる作品と言えそうだ。
ただ、作品としてはかなり軽いし、これがカルト的な人気を
集めた監督の作品かと思うと、多少物足りないところがある
のは否めない。1950年生まれの監督が年を取ったとは思いた
くないが、どこかで妥協した感じもあるのだろうか。
正直に言ってテーマが充分に消化されていない感じもして、
特に結末は予想通りのものでしかなかった。上映時間が85分
というのは“Basket Case”の91分とさほど違いはないのだ
が、この6分で描かれるものが案外大きいものなのだろう。
脚本家には、監督の他に本作の製作も担当しているラッパー
のR.A.ソーンバーンの名前が挙げられており、製作者がそ
れなりの権限は持っていたようだ。なおソーンバーンのフィ
ルモグラフィーでは、2001年ヴェネチア映画祭で上映された
ブラッド・レンフロ主演作“Bully”に楽曲を提供している
とあった。
出演は、歌手、舞台女優でモデルでもあるチャーリー・ダニ
エルスンと、本業はミュージシャンというアンソニー・スニ
ード。共に映画は初出演となっているが、それぞれ頑張って
演技していた。
なお映画の中には、写真家という設定のヒロインが撮ったと
されるスチル写真が何点か登場するが、その写真がいろいろ
細工の施されたもので、ちょっと『リング』を思わせるよう
な部分もあって面白かった。巻頭のクレジットには、Victim
Photoとして写真の制作者も出ていたようだが、そうとは知
らずにその名前を見逃したのが残念だ。

『ラスト・ブラッド』(追記)
この作品については4月5日付でも掲載しているが、実はあ
る点が気になって2度目の試写を観に行った。それは映画巻
頭のアクションシーンで、背景となる1970年代の営団地下鉄
丸の内線が見事に赤く塗られた車両で登場してくるのだ。
このシーンは、最初観たときは良くできたCGIかとも考え
たのだが、何か気になった。そこで見直してみると、エンド
クレジットにアルゼンチンで撮影されたシーンがあると表示
され、その後に協力としてブエノスアイレス地下鉄の名前が
挙がっていた。
そこで思い出したのは、以前に新聞記事で読んだ東京を引退
した地下鉄の車両が南米に渡って第2の人生を送っていると
の情報。なるほどこれがその車両だったのだと思い至った次
第だ。これはCGIなどではない正真正銘の実写なのだ。
映画では、塗装も塗り直されたのか見事に美しい赤い車両が
疾走していて、これには本当に嬉しくなってしまった。そん
な訳でこの映画は、東京の地下鉄マニアにも必見の作品かも
しれないと思い、追記することにした。
        *         *
 今回の製作ニュースは2つ。
 まずは、2003年2月2日付で紹介した映画の製作が中止に
なるまでの顛末を描いたドキュメンタリー『ロスト・イン・
ラ・マンチャ』で、その元となったテリー・ギリアム監督の
“The Man Who Killed Don Quixote”の製作が再開される可
能性が出てきた。

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05月17日(日)
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