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On the Production
by 井口健二
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■シークレット・ディフェンス、顧客、美しい人、私のなかの8ミリ、非女子図鑑、失われた肌、西のエデン、UWビギンズ、虹色の硝子
3月12日から六本木で開催される2009フランス映画祭で上映
される作品。
1969年『Z』やオスカー監督賞にノミネート、脚色賞受賞の
1982年『ミッシング』などの名匠コスタ=ガヴラス監督によ
る2009年最新作。ギリシャの古典叙事詩『オデュッセイア』
に準えて、ヨーロッパを放浪する若者の姿が描かれる。
主人公は西ヨーロッパへの密入国を試みる多数の人々と共に
貨物船で航行している。ところが遠くに灯の見える場所で警
備隊に発見され、船長は船を捨てて逃走。大多数の密航者も
捕まるが、主人公は辛くも海に逃れ岸に向かって泳ぎ出す。
そして辿り着いたのは…「エデンの園」という名のリゾート
地のプライヴェートビーチ。
そこで主人公は、最初は従業員の制服を盗んで潜入し、本物
の従業員と間違われたりもしながらも何とか切り抜けるが、
玄関口には警察が見張っていて脱出はままならない。しかも
リゾート側も独自に密入国者の捜索を始める。
その内、ハンブルグから来た女性客と親しくなったり、さら
にパリから来たマジシャンの助手に駆り出された主人公は、
マジシャンの言葉を信じ、フランス語を1年間学んできた実
力も携えてパリを目指すことにする。
その道中でのいろいろな人々との出会いや別れを経ながら、
主人公は一路パリを目指して行く。そこでは、いずこも同じ
不況に晒されている下層労働者の現状を背景に置き、それで
も前向きに、そしていろいろな人々の温情にも合いながらの
旅が描かれる。
主演は、2005年ヴェネチア映画祭で受賞した“Texas”とい
う作品に出演のリッカルド・スカルマッチョ。寡黙な役柄だ
が笑顔に好感の持てるイタリアでは人気俳優のようだ。
その他に、ドイツ人女優のジュリアナ・コーラー、フランス
人俳優で『顧客』にも出演のエリック・カラヴァカなど多彩
な顔ぶれが共演している。
コスタ=ガヴラス監督というと社会派のシリアスでハードな
作品が思い浮かぶが、本作はかなりコミカルな描写もあり、
また主人公が遭遇する事態もそれなりに人の善意や温かさに
も溢れていて、心地よく観られる作品だった。1933年生まれ
の監督はまだまだ元気なようだ。

『アンダーワールド/ビギンズ』
          “Underworld: Rise of the Lycans”
2003年、06年にケイト・ベッキンセールの女戦士役で好評を
博した『アンダーワールド』シリーズの最新作。ただし今回
は、これらの物語の起源を語る中世時代の前日譚を描いてい
るものだが、何せ不死者の話なので登場人物の多くは同じ顔
ぶれとなっている。
物語は、ライカン(狼人間)族の始祖となるルシアンが誕生
し、ヴァンパイア族の長老ヴィクターが奴隷としてルシアン
を支配している状況で始まる。しかし、ヴィクターの娘ソー
ニャはルシアンを愛し、それはヴァンパイアの掟を破る行為
となって行く。
そしてルシアンも、奴隷の境遇から反逆を試みて行くことに
なるのだが…
元々3部作構成だったと言われる物語が、これで完結するこ
とになるようだ。シリーズの前日譚というのは、人気のキャ
ラクターが生誕前だったりするといろいろ難しいものだが、
本作ではよく似たプロットを踏みながらも、新たな物語が見
事に展開される。
しかも、舞台が中世ということで、その時代背景に合わせた
武器やアクションなどもよく考えられているもので、さらに
は狼人間族とヴァンパイア族との戦いなども、なかなかの迫
力で描かれていた。
出演は、主人公ソーニャ役に『ナンバー23』などのローナ
・ミトラ。ルシアン役には前2作にも登場し、『フロスト/
ニクソン』のフロスト役も好評のマイクル・シーン。さらに
ビル・ナイ、シリーズの原案者でもあるケヴィン・クレイヴ
ォー、スティーヴン・マッキントッシュらが前作から引き続
き演している。
監督は、前2作と本作でのクリーチャー・デザインも手掛け
るパトリック・タトポロス。元々はイラストレーターでこれ
が初の監督作品だが、勝手知ったる他人の庭という感じで、
物語をそつなくまとめている。

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02月28日(土)
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