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On the Production
by 井口健二
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■ミーシャ、新宿インシデント、パニッシャー、レイン・フォール、太陽のかけら、今度の日曜日に、GOEMON
日本にやってきた。しかし、先輩は彼女への連絡もせずに休
学して帰国していた。そのため目的もなく学校に通うことに
なった主人公は、実習課題の「興味の行方」の被写体も決め
られない。
そんなとき彼女は、学校の用務員として働く1人の中年男性
に目を留める。その日本人男性は、用務員だけでなく朝昼晩
といろいろな仕事に就いており、さらに立ったまま寝るとい
う特技ももっているようだ。
こうして被写体を決めた主人公は、その取材の過程で日本人
男性の人生を知って行くことになる…という物語が、長野県
松本市の信州大学キャンパスなどを背景に描かれる。
この被写体となる日本人男性が、ガラス瓶のコレクターとい
う設定で、主人公には最初はゴミにしか見えない様々な形の
ガラス瓶が、徐々に男性の人生を語りだし、そしてドラマを
作り上げて行く。
出演は、日本で歌手デビューした韓国出身のユンナと市川染
五郎。映画初出演のユンナの初々しさと市川の飄々とした佇
まいが物語の雰囲気に填っている。また『殺人の追憶』など
のベテラン韓国女優チョン・ミソン、日本側は竹中直人らが
脇を固めている。
それと物語のキーになるガラス瓶には、5万本のガラス瓶を
並べたボトルシアターを作っているという日本有数のコレク
ター=庄司太一氏の監修で、様々な趣のあるガラス瓶が登場
している。
ガラス瓶に託つけた人生の語り口には上手さを感じるし、そ
れが直接ドラマに結びつく展開も見事なものだ。ただ、映画
の見せ場がそこに集約されすぎて、他にもあるはずの物語が
そこで一気に消されてしまっているような感じもした。
もちろん1点での集中力は大切だが、観客としてはもっと他
にも、それほど大きくなくてもいいから何かの感動があって
欲しいような気もしたものだ。先輩との再会の辺りがあっさ
りしすぎている感じなのかな…
因に、日本映画エンジェル大賞は、この作品が選出された回
をもって終了したようだ。
『GOEMON』
2004年に『CASSHERN』を発表した紀里谷和明監督の
5年ぶりの新作。写真家としても著名な監督が、前作と同様
の映像感性を目一杯に繰り広げた作品。
1582年本能寺の変を契機に豊臣秀吉が天下を取り、戦国時代
が終結した安土桃山の時代を背景に、後に義賊と称えられる
石川五右衛門の活躍を描く。
戦乱の世が終り人々は自由を取り戻したものの、一般民衆の
貧富の差は拡大し、金持ちと役人たちが幅を利かせ始める。
一方、秀吉を頂点とする政権は、大名たちの会議なども行わ
れているが、秀吉は海外派兵も目論んでいるようだ。
そんな時代に五右衛門は、金持ちから財宝を盗み民衆にばら
まく義賊として人気を高めていたが…ある日のこと忍び込ん
だ土蔵で一つの小箱を手にする。そしてその小箱に隠された
秘密は、やがて天下を揺るがして行くことになる。
五右衛門が抜け忍とする説は以前からあるようだが、本作で
はさらに霧隠才蔵や服部半蔵、織田信長、茶々らとの特別な
関係も描き、また猿飛佐助や石田三成、徳川家康、千利休な
ども登場する歴史絵巻が展開される。
そしてその配役を、五右衛門=江口洋介、秀吉=奥田瑛二、
才蔵=大和たかお、茶々=広末涼子、信長=中村橋之助、家
康=伊武雅刀、利休=平幹二朗。その他、ゴリ、要潤、玉山
鉄二、チェ・ホンマン、寺島進、佐藤江梨子、戸田恵梨香、
鶴田真由、りょう、福田麻由子、広田亮平、田辺季正などの
多彩な顔ぶれで描いている。
義賊の五右衛門を描いた映画作品は過去に例が無いとのこと
だが、本作のお話自体は、先に何処かで発表されているかも
知れないと思えるものだ。しかし本作で特筆すべきは、その
お話より衣裳やセットなど美術デザインの奇抜さだろう。
特に衣裳は、使用される素材は当時実在したものに限定する
としながらも、南蛮との交流が進んだ安土桃山の時代背景を
拡大解釈して、かなり異様とも言えるデザインを造り出して
いる。しかもそこに和風のテイストも残しているのは見事な
ものだ。
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02月22日(日)
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