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On the Production
by 井口健二
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■鴨川ホルモー、恋極星、チョコラ!、ヤッターマン、ピンクパンサー2、ニセ札
脚本はマーティンが執筆。監督は2004年3月に紹介した『エ
ージェント・コーディ』などのハラルド・ズワルト。製作総
指揮を、前作の監督で『ナイト・ミュージアム』なども手掛
けるショーン・レヴィが担当している。

『ニセ札』
構成作家・俳優…の木村祐一による第1回監督作品。1951年
1月に戦後初めて発行された新千円紙幣を巡って、山梨県下
で実際に起きた村ぐるみの紙幣偽造事件。その実話から想を
得て描かれたオリジナルの物語。
実際の事件は「チ−五号」と呼ばれるもので、小学校の元校
長や元陸軍の将校らが犯人として逮捕起訴されたそうだ。そ
の実話から映画では、元陸軍の将校と共に地元小学校の女性
教頭らが関与したものとして再構成されている。
この女性教頭を倍賞美津子が演じていて、教育者がこのよう
な事件にのめり込んで行く過程としての当時の社会に対する
不満や世相が描かれる。これがまた現代に通じるものとなっ
ているのはなかなか良質な脚本と言えるところだ。
共演は段田安則、村上淳、青木崇高、板倉俊之、三浦誠己、
西方凌と、監督の木村祐一。芸達者が揃っている感じだが、
中でも新人の西方と障害者を演じた青木の若い2人がよく頑
張っている感じがした。
その他、宇梶剛士、泉谷しげる、遠藤憲一、中田ボタンらが
出演している。
物語は、偽札作りに至るいろいろな状況が丁寧に描かれてい
て、それは偽札作りそのものよりも、女性教頭を中心とした
止むに止まれず犯罪に走る庶民の足掻きであり、現代人にも
共感を持って捉えられるものだ。
その一方で偽札作りがだんだん楽しくなって行く心境の変化
や、登場人物たちがそれにどんどんのめり込んで行く様子な
どが描かれていて、その辺は犯罪心理の映画としても面白い
ように感じられた。
因に、脚本は『橋のない川』などの製作者山上徹二郎の企画
に基づき、監督と、『リンダ・リンダ・リンダ』などの向井
康介、2006年11月に紹介した瀬々監督版『刺青』などの井土
紀州が共同で執筆している。
初監督の木村の演出は、出演者に恵まれたとも言えるが問題
はなく思えたし、このような感じで撮って貰えるならまた観
てみたい感じもした。ただ、プレス資料によるとSF映画に
は多少偏見があるようで、その辺も含めたちょっとスキのあ
るSF映画も作って貰いたいものだ。
それから、映画に登場する大型の製版カメラは1946年製造の
大日本スクリーン社製で、恐らくは実働する世界唯一と言わ
れるもの。他にも、印刷機など当時の実物が登場して貴重な
動く姿を見せてくれている。
なお試写会の後で、あんないい加減な装置で偽札が作れる訳
が無いと息巻いている人がいたが、本作は偽札作りを指南し
ようというものではないし、映画の中でも真券と比較すれば
一目で偽物と判るような粗雑なものだったことは明らかにさ
れている。
そんなことより本作は、現代にも共通する当時の庶民の苦し
みなどを描いているおり、その点で僕は大いに興味を持って
観ることが出来た。

02月14日(土)
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