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On the Production
by 井口健二
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■パラレル、桃まつりkiss!、エリートヤンキー三郎、フロスト×ニクソン、60歳のラブレター、バーン・アフター…、ダイアナの選択
でくれているような作品になっている。
正直なところは、3組のカップルとも比較的恵まれた生活環
境で、昨今の不況下の60歳が同じだとは言い切れないところ
もあるが、でもまあこれもある種の夢として鑑賞できれば良
いというところかな。自分もひょっとしたらこうなっていた
かも知れないものだ。
共演は、星野真理、内田朝陽、石田卓也、金澤美穂、原沙知
絵、石黒賢、佐藤慶。特に、若手の俳優陣には注目株が集ま
っている。
ケータイ小説の映画化など、未熟な恋物語が幅を利かせる日
本映画界で、たまにはこんな大人のラヴストーリーも良いか
も知れない。「夫婦50割」の推薦作品にでもしてもらいたい
ところだが、その制度を行っている映画館も減ってきている
ようで、それは残念だ。

『バーン・アフター・リーディング』
                “Burn After Reading”
前作『ノーカントリー』では、アカデミー賞の監督と脚色、
それに作品(製作)賞の主要3部門を獲得したコーエン兄弟
による最新作。ワシントンのスポーツジムのロッカー室に置
き忘れられたCD−ROMを巡って、途轍もなくブラックな
コメディが展開される。
前作『ノーカントリー』は上映時間2時間2分、内容もかな
り重いものだったが、今回は上映時間1時間36分。しかも主
演には、常連のフラシス・マクドーマンドとジョージ・クル
ーニーを据えて、さらに本人が参加を熱望したブラッド・ピ
ットの共演。
その上、脚本はマクドーマンド、クルーニー、ピットには当
て書きで書かれたものということだから、これは間違いなく
コーエン兄弟が自ら楽しみたくて作った作品だ。従って作品
は、だからこその楽しさに溢れ、観客もその楽しさに酔いし
れることができる。特にピットの演技は出色のものと言える
だろう。
物語は、これも当て書きのジョン・マルコヴィッチ扮するC
IA職員が、長年のアルコール依存症がばれて離職させられ
るところから始まる。ここで飲酒に関してモルモン教に対す
る皮肉が出る辺りからコーエン節は全開という感じだ。
一方、ティルダ・スウィントン扮するCIA職員の妻は、ク
ルーニー扮する連邦保安官の男と不倫状態にあったが、その
恋を全うするための離婚の準備を進めようとしている。
そしてマクドーマンド扮するジムの女性従業員は、出合系で
クルーニーを含む複数の男性たちと交際していたが、恋を成
就させるには全身整形が必要と思い込んでいた。
そんなとき、ジムのロッカー室に1枚のCD−ROMが置き
忘れられ、そのCD−ROMをピット扮するインストラクタ
ーが開いてみると、そこにはCIAの機密情報と思しきファ
イルが記録されていたが…
実は、物語の真相はこれだけなのだが、そこに登場人物たち
の思惑が複雑に絡み合い、思いも拠らぬ展開が繰り広げられ
て行く。しかもそれがコーエン兄弟らしく、正にブラックに
展開されるのだ。
登場人物の全員が良からぬことを企んで、しかもほぼ全員が
見事に失敗する。甘い汁を吸えた者もいないではないが、そ
れもかなりの皮肉に満ちたもの。しかしそこにはカタルシス
もあり、特にアメリカ人のCIAに対する不信感が小気味よ
く描かれていた。

『ダイアナの選択』“The Life Before Her Eyes”
アメリカから時折というか、かなり頻繁に聞こえてくる学校
での銃乱射事件。そんなアメリカ人なら誰でも遭遇しうる事
件を背景に、1人の女性の選択した人生を描いた作品。
その女性は高校時代からドラッグに手を出し、親友となった
女生徒はミッション系の出身で彼女にいろいろとアドヴァイ
スをしてくれるが、彼女自身はほとんど聞く耳を待たない。
それでも親友の2人は、近所の留守宅のプールで勝手に泳い
だり、青春を謳歌している。
しかし、その日の授業の直前に遅刻を覚悟で洗面所に入った
2人は、遠くから叫び声と銃声が響くのを聞く。そして2人
の佇む洗面所にマシンガンを構えた男子生徒が押し入ってく
る。その男子生徒は「どちらかを1人を殺す。死ぬのはどっ

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01月25日(日)
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