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On the Production
by 井口健二
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■スラムドッグ、イエスマン、ロックンローラ、トワイライト、ビバリーヒルズ・チワワ、アンティーク、レイチェルの結婚、ベルサイユの子
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『スラムドッグ$ミリオネア』“Slumdog Millionaire”
『28日後...』などのダニー・ボイル監督の最新作。日本
でも話題を呼んだクイズ番組「ミリオネア」のインド版を巡
って、史上最高の賞金2000万ルピー(約3600万円)に挑む若
者の苦難に満ちた半生が描かれる。
その若者は、賞金2000万ルピーを賭けた最後の問題に挑もう
としていた。しかしそこで放送時間が終了し、最後の問題は
次回に持越しとなる。ところがスタジオを出ようとした若者
は警察に拘束され、不正が行われていたのではないかとの尋
問を受ける。
その若者はムンバイのスラム街の出身で、仕事は電話会社の
オペレーター室のお茶汲み。まともな教育を受けたこともな
く、それまでの回答を知識として知っていたはずがないと疑
われたのだ。
ところが、警察での取り調べが進む内に、彼がそれまでの人
生の中でそれぞれの問題の答えを知るに至った過程が明らか
にされて行く。それはスラム街出身の若者が辿った恐怖と悲
しみに満ち溢れた物語だった。
原作の小説はあるようだが、ボイル監督がこの映画で目指し
たのはインド・ムンバイ版の『シティ・オブ・ゴッド』では
なかったかと感じた。特に前半のスラム街の中を縦横に走り
回る子供たちの姿は、ブラジル映画とは違う意味で生き生き
としていたものだ。
しかしその子供たちが、ブラジル映画以上に過酷な運命に晒
されて行く。インド国内では「現実と違う」という批判も出
たようだが、過酷な運命に立ち向かって行く子供たちの逞し
さは見事に描かれていた。
脚色は、『フル・モンティ』でオスカー候補に挙がったサイ
モン・ビューフォイ。脚本家は3度インドを訪問し、その際
にスラム街で感じ取った人々のヴァイタリティを脚本の描き
込んだということだ。
またその脚本は、物語の展開や構成も見事で、実はいくつか
のシーンでは今年初めて落涙する羽目にも陥ってしまった。
なお本作は、先に発表されたゴールデングローブ賞で、ドラ
マ作品、監督、脚本、音楽の4部門を受賞しており、アカデ
ミー賞(オスカー)では作品賞を含む9部門で10個の候補に
挙げられている。

『イエスマン』“Yes Man”
ジム・キャリー主演の今回は真性ファンタシーではないが、
ちょっとファンタスティックなコメディ作品。
主人公は銀行の融資窓口の担当者。職業柄‘no’と答えるこ
とが多く、実生活でも何かにつけて‘no’と答えてしまう。
その上、2年前の離婚を引き摺ったまま人付き合いが億劫に
なり、カウチポテトの生活は友人たちにも心配されていた。
ところが、偶然出会った昔の友人に誘われたセミナーで、彼
は行き掛かりから「‘yes’としか言わない」ことを誓約さ
せられてしまう。しかも破ると天罰が下るという条件付き。
もちろんそれは本心からではない主人公だったのだが。
最初は出任せに‘yes’を連発してみると…、さらに‘no’
と言ってしまうと…。そして物語は、‘yes’を連発したこ
とで巡り会った女性とのロマンスを縦軸に、ショートコント
のようなエピソードをちりばめて展開されて行く。
ジム・キャリーというコメディアンは、なかなか日本人の感
性には合わないようで、本作でもちょっと眉をしかめたくな
るようなエピソードも登場する。でもそのファンタシーの志
向は、実は僕は大いに気に入っているもので、今回もそれは
存分に楽しむことができた。
中でも本作の「‘yes’としか言わないことで、普通は拒否
されることが肯定され、それによって良い結果がもたらされ
る」という展開は、特に今の時代には重要なメッセージのよ
うにも思えた。
脚本は、2008年『寝取られ男のラブ♂バカンス』では監督を
務めていたニコラス・ストール。彼はキャリーとは2005年の

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01月31日(土)
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