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On the Production
by 井口健二
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■大阪ハムレット、ハイスクール・ミュージカル、ハルフウェイ、サーチャーズ、花婿は18歳、プライド、長江にいきる、NIGHT☆KING
もので、最近の物語的にあっさりとした日本映画とは趣が異
なるが、こんな物語もたまには良いかも知れない。そんなと
ころに一種の新鮮さも感じられる作品だった。
物語は、オペラ歌手を目指す2人の女性が主人公。1人は、
高名なオペラ歌手を母に持つ資産家の娘で、しかも才能もあ
り、授業料の高い音楽学校に通っている。もう1人は、場末
のクラブ歌手の娘で、アルバイトをしながら庶民的な音楽学
校に通っている。
そんな2人が1枚のオペラの入場券をきっかけに巡り会い、
お互いをライヴァルとして競い合って行くことになるが…
この主人公の2人を、昨年の日本レコード大賞新人賞を受賞
した5オクターブの声域を持つという女性歌手ステファニー
と、『デスノート』の主人公の妹役、また『ウルトラマン・
マックス』のアンドロイド役の満島ひかりが演じている。
芝居は初めてというステファニーは、まあ演技の点はお世辞
にも名演とは言えない(中でも、ジョン・カビラとの親子の
会話シーンは…だ)が、さすがに後半のクラブなどでの歌唱
シーンは見事だった。
一方の満島は、本人も戸惑ったという程の裏表のあるキャラ
クターで、これは漫画的に面白かった。そんな中で、オペラ
コンクールのシーンでは、歌は吹き替えであるもののそのブ
レスのタイミングや口の開き方など、さすがに演技で対抗し
たいという思いがありありという感じで、物語だけではない
2人のライヴァル心が観えてくるのも心地よかった。
そして、クラブなどでの歌唱シーンでは、元女性ボーカルグ
ループFolder 5のメムバーという実力は発揮できていたよう
だ。ただし、試写前のミニ記者会見では、「仮にテレビ等で
歌う機会が出来ても口パクにしてください」としていたが…
他に渡辺大、及川光博、高島礼子、由紀さおり、新山千春ら
が共演。監督は『デスノート』の金子修介。特に及川と高島
は原作者の指名だそうで、会見では一条が満足そうだった。
なお、試写前のミニ記者会見では及川に、「主演作『クロー
ンは故郷をめざす』が同時期の公開になることの感想は?」
と、ちょっと意地悪な質問をしてみたが、「人との出会いを
大切にしているので、たまたまこういうことになったが、常
に自分はベストを尽くしているつもりだ」というスマートな
回答で、これには感心した。

『長江にいきる』“秉愛”
桂林の景勝を水没させる三峡ダム。そのダムは長江(揚子江)
の岸辺に住んでいた住民の生活基盤をも奪い、彼らに移住を
余儀なくさせている。その人口140万人。このドキュメンタ
リーは、その長江の岸辺に住み、移住を拒否し続けた1人の
女性を描いている。
彼女は夫と結婚する前には別の恋人がいたのだという。しか
し岸辺に住むのが何よりだという父親に説得されて夫の許に
嫁いだ。その夫とは2人の子供をもうけたが、夫は身体が弱
く、彼女は日々山の畑まで通って、果樹やトウモロコシなど
の栽培を行っている。
その畑仕事は重労働だが、彼女には夫と2人の子供を養って
いるという気概がある。そして、「自分が死んだら『あの人
は骨身を惜しまず、よく夫や子供の面倒を見たね』と言われ
たい」のだという。
そんな彼女の許に三峡ダム建設の話が持ち上がる。そして、
その水位が上がる海抜135m以下に住む彼女の一家を含む住
民に移住命令が下される。
もちろん移住の保証金は出るが、彼女の一家が移住地として
割り当てられるのは、畑から遠く離れた場所。しかもそこは
他の農民たちの占有地区で、新たに近くの農地が割り当てら
れることもない。このためほとんどの住民は、農地を捨てて
都会に移住するようだ。
しかし彼女は、農民の暮らしが一番で、いまさら都会に住み
たくはないのだという。そんな彼女に役人たちは、甘言を弄
したり、「戸籍を取り上げて子供を学校に行けないようにし
てやる」などの脅しをかけたりもしてくる。
昔は、下放政策で都会の人間を地方に追いやった政府が、今
度は地方の人間を都会に追いやっている。そんな皮肉にも笑

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11月23日(日)
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