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On the Production
by 井口健二
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■第168回
        *         *
 1956年のジョン・ヒューストン監督作品でも知られるハー
マン・メルヴィル原作“Moby Dick”(白鯨)を、『ウォン
テッド』が好調のティムール・ベックマベトフ監督でリメイ
クする計画が発表されている。
 しかもこの計画は、2006年公開の“Accepted”というコメ
ディ作品が好評のアダム・クーパーとビル・カレッジのコン
ビが立上げたとのことで、これは何か起こりそうな計画だ。
そしてコンビは、計画を『ナショナル・トレジャー』などを
手掛けたコーマック&マリアン・ウィバリーに持ち込み、彼
らの製作で進められることになっている。なお、クーパー=
カレッジの脚本には、6桁($)の高い方で契約が結ばれた
そうで、その期待値は大だ。製作会社はユニヴァーサル。
 因に、ヒューストン版の脚本はSF作家のレイ・ブラッド
ベリが担当したものだが、ヨーロッパで撮影中のヒュースト
ンが現場で必要になった脚本の改訂のためにアメリカに住む
作家を呼び寄せたら、今から行くと連絡したまま音信不通と
なり、2週間後に船でやってきた…という、ブラッドベリの
飛行機嫌いを象徴する逸話も残している作品でもある。
 原作の物語は、巨大な白鯨を執拗に追い続けるエイハブ船
長の姿を、若い船員イシュメルの語りで描いたものだが、今
回の映画化では、脚本家たちは、より映像的なグラフィック
ノヴェル・スタイルで描くとしており、エイハブ船長はより
カリスマ的になって、全体的にアクションアドヴェンチャー
の趣を強くするとのことだ。
 実は、原作に最も忠実といわれるヒューストン版は、その
重苦しい雰囲気のために興行的な成功は納められなかったも
ので、今回のグラフィックノヴェル・スタイルがどのような
結果を残すかにも興味が湧く。そして今回の発表では監督も
決まり、計画は順調に進み始めたようだ。公開予定は2011年
となっている。
        *         *
 次もリメイクで、1987年にミッキー・ローク、ロバート・
デ=ニーロが共演した“Angel Heart”の再映画化が計画さ
れている。
 オリジナルの物語は、私立探偵の主人公が謎めいた男から
人捜しの依頼を受け、その調査を進める内に彼の周囲で殺人
事件が連続する。そして、最初はハードボイルドのように始
まった物語は、徐々に超常現象の世界へと踏み込んで行くと
いうもの。元々はウィリアム・ヒョーツバーグの“Falling
Angel”(堕ちる天使)を原作としており、この原作は、ス
ティーヴン・キングが、「レイモンド・チャンドラーがオカ
ルトを書いたような作品」と絶賛した小説だそうだ。
 また、オリジナルの映画化では、共演のリサ・ボネーがヤ
ング・アーチスト賞を受賞した他、アメリカSF・ファンタ
シー&ホラー映画アカデミー主催のサターン賞では、ボネー
とデ=ニーロが助演賞、監督のアラン・パーカーは脚色賞に
ノミネートされている。
 という作品のリメイクだが、今回の計画では、『21』や
『ゴースト・ライダー』などを手掛ける製作者のマイクル・
デ=ルッカが、以前はカロルコが手掛けた映画化のリメイク
権を獲得したもので、原作小説の大ファンだという映画製作
者は、「2つのジャンルの見事な融合で、さらに文学性とコ
マーシャリズムも兼ね備えている」として映画化に意欲を燃
やしている。
 脚本家や監督、出演者なども未定だが、前作との関係では
配給はソニーが行う可能性は高そうだ。因に1987年の映画化
は、コロムビアの姉妹会社トライスターが配給していた。
        *         *
 マーヴェル・コミックスの映画化で、2006年5月15日付の
第111回などで紹介した北欧神の化身“Thor”を主人公とす
る計画に、『スルース』などのケネス・ブラナー監督と交渉
していることが発表された。
 この計画は、最初の報道では『ポセイドン』『アイ・アム
・レジェンド』などのマーク・プロトセヴィッチが脚本を担
当していたもので、一時は『バットマン・ビギンズ』のデイ

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10月01日(水)
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