ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■悪魔のリズム、かけひきは恋のはじまり、ハピネス、櫻の園、最後の初恋、初恋の想い出
ある日、ホウ・ジアの家で事件が起き、母子家庭となった一
家は脚の悪い母親によって支えられて行くことになる。
それでも2人の関係が変わることはなく、高校から大学進学
へと進路を決める時期に差し掛かる。そんな時、ホウ・ジア
は、母親から「父親の仇のチー家の娘とは付き合うな」と言
われてしまう。
突然の申し渡しに驚くホウ・ジアだったが、母親はその詳し
い理由を教えてはくれない。一方、チー・ランも父親に真相
を問い質したことから、理由は言わずにホウ・ジアとの付き
合いを止めるように説得される。
それでも引かれ合う2人は、自分たちを『ロミオとジュリエ
ット』に準えて生きて行く決心をするが…。シェイクスピア
原作の結末を知る観客には、この後はかなり緊張した展開が
続くことになる。
1980年代は、まだ家族が心の中心にある時代ということで、
主人公たちはその家族と自己との板挟みに遭う。その状況が
現代にうまく通じるかというところがキーになるが、本作で
はいろいろな要素を組み合わせて、これなら現代の若者にも
納得できるだろうと思わせるものになっている。
その辺が、ただ純愛劇を観せるだけでないドラマを作り上げ
る監督のうまさとも言えそうだ。その手立ての一つがシェイ
クスピアの悲劇の巧みな引用で、その他にもいろいろな要素
が物語を作り上げている。
それから、同監督で僕が観た前2作は共に大自然を背景にし
ていたが、本作は都会(ハルピン)を舞台にしたもの。背景
は違っても変わらず素敵な物語を作り上げてくれた。
なお、主演のヴィッキー・チャオは、『レッド…』や『少林
サッカー』などでは、アクションやコミカルさに魅力を感じ
ていたが、本作のようにしっとりとした女性らしさも素晴ら
しい。因に、本作の本国公開は2005年で、1976年生のチャオ
は撮影時には20代後半のはずだが、高校生時代から演じてみ
せる演技力も見事だった。
ただし、小学生時代のヒロイン役は、2004年の『玲玲の電影
日記』でもヒロインの10代役に扮していたチャン・ユイジン
が演じているものだ。

08月31日(日)
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