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On the Production
by 井口健二
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■ウォーリー、ハンサム★スーツ、弾突、M、ウォーダンス、ファム・ファタール、私の恋
一方、スリ団の女首領は大阪での事件の後に帰国して、ソウ
ルで新たな事業を始めようとしていたが、そこは彼女と確執
のある別の組織の縄張りだった。そして、その縄張りを取り
仕切るボスはなかなか彼女にその場所を与えようとしない。
こうして、警察と2つの組織の暗闘が始めるが…
物語が進むに従って、刑事の立場が明らかにされて行き、彼
の苦渋に満ちた人生が描かれて行く。そして、それに対する
女首領の背景にもドラマが隠されている。
そんな物語が、韓国版『白い巨搭』などのキム・ミョンミン
と、2002年『酔画仙』などのソン・イェジンの共演で描かれ
る。特に、清純派女優と言われるソンの妖艶なファム・ファ
タールぶりが見事だった。
監督は、『リベラ・メ』などの助監を務め、本作がデビュー
作のイ・サンギ。
凶悪な韓国スリ団の手口が克明に描かれる。その手口は、映
画や小説で芸術とまで称される日本のスリとは異なり、被害
者を傷つけることも厭わない凶暴なもので、その恐ろしさも
目の当りにさせられる。
そんなスリの様子は、イ監督が6ヶ月間、捜査隊に同行して
取材したものだということだ。この韓国スリ団の犯行は報道
などでも聞いてはいたが、ここまで恐ろしいものとは思わな
かった。
しかも大阪の事件の描写では、女首領が日本人の群集に向か
って言い放つ台詞も見事に決まってその恐ろしさを描き切る
が、それを曝け出す監督の見識にも感心した。その他、警察
とスリ団の闘いも、日本映画にはないリアルさで見事に描か
れていた。
『私の恋』“내 사랑”
9月下旬開催の「韓流シネマ・フェスティバル2008」で
上映される作品の1本。『青春漫画』で有名なイ・ハン監督
による青春群像劇。いろいろな状況の男女の恋愛模様がグラ
ンドホテル形式で描かれる。
大学に復学した先輩に片思いの後輩女子大生、ちょっと奇矯
な女性と彼女を愛してしまった男性、妻に先立たれたコピー
ライターと広告代理店の女性チームリーダー、久し振りに帰
国して6年前の約束の電話を待つ男性…
この内の一つは回想であったり、細かな構成が巧みに織り込
まれて、全体として素敵な物語が展開される。同じ形式の韓
国映画では2006年8月に『サッド・ムービー』を紹介してい
るが、この形式には正に映画を感じさせてくれるものだ。
しかも今回は「サッド」な物語ばかりではなく、中には微笑
ましいものもあって、心地よく観終えることができた。それ
に物語が全体的に前向きで、未来への展望を感じさせるエン
ディングにはほっとするところもあった。
しかも、全て物語が最後に一気にクライマックスを迎える構
成は、映画的に見事にやられたという感じもさせてくれた。
この辺は、脚本監督ともに見事なものだ。
出演は、1970年生まれのカム・ウソンから、1988年生まれの
イ・ヨニまで幅広い年齢層に股がっており、その辺もそれぞ
れの世代の登場人物に感情移入ができて、自分の思い出など
にも重ねて楽しむことができた。
特に、『M』にも出演していたイ・ヨニの演じる清純さとコ
ミカルさを兼ね備えたヒロインは、両作品を併せると際立つ
面白さだった。他に、チェ・ガンヒ、オム・テウン、チョン
・イル、リュ・スンニョン、イム・ジョンウンらが出演。
なお、物語の一つで8月20日がキーの日付となっているが、
実は先に紹介した『M』でも8月20日がキーになっていた。
韓国では何か特に意味のある日付なのだろうか。因に、本作
では皆既日食もキーになっているが、2001年以降のソウルで
はないようだ。
それから本作では、車窓の風景や学生街、オリンピック公園
など、ソウルのロケーションも楽しめるものになっている。
08月24日(日)
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