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On the Production
by 井口健二
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■クローン・ウォーズ、シャカリキ!、夢のまにまに、ハムナプトラ3、アキレスと亀、練習曲、ブロークン
な物語にもなっているものだ。
作品の全体の雰囲気は、『HANA-BI』や『菊次郎の夏』に戻
ったようなところもあって、その間に今回はいろいろな実験
的な絵画手法が、従来の作品のギャグの替りに挿入されてい
るという感じのものだ。
なお劇中に登場する北野武の絵画も、模倣あり、パロディあ
りで、いろいろ面白いものになっていた。
『練習曲』“練習曲”
8月23日から六本木で開催される台湾シネマ・コレクション
で上映される内の1本。2007年の台湾映画興収第1位を記録
した作品。
聴覚障害のある青年が、台湾南部の高雄市を出発して反時計
回りに台湾を一周する自転車旅行に出る。その青年の1週間
の旅の出来事が綴られた作品。行く先々での人々との交流や
遭遇した祭りの様子などを描いたもので、ドラマとドキュメ
ンタリーも混淆している。
そんな構成であるから、ドラマの部分はあまり掘り下げられ
てもいないし、それがどうなると言うようなものでもない。
正直に言って、ちゃんとしたドラマを期待した者には、多少
はぐらかされる感じだったが、こういう作品が人気を得るこ
とも理解はできるものだ。
台湾を一周する間の風景はいろいろ変化して、その間に花蓮
や基隆など聞いたことのある地名が出てくるとそれなりに興
味も湧く。だからそんな気持ちで観る観客も多いのかも知れ
ない。実際この映画の公開後、台湾では自転車で一周旅行す
る人が増えたそうだ。
主演は、美術デザイナーとしても著名だというイーストン・
ドン。彼自身が聴覚障害者だそうで、確かに口調などには独
特なものがある。それで、補聴器を題材にしたエピソードな
どもあるが、それはそれとして描かれているだけのものだ。
他にも、映画の撮影をしている一団や、やはり自転車で母親
の元に向かっている青年や、東欧から来た女性モデル等が登
場する。そのそれぞれのドラマは深くは描かれないが、人々
がいろいろな悩みの中で、それでも未来に向かって行く姿は
描かれている。
実際、監督は、殺伐とした世の中で、そうではない生活もあ
ることを描きたかったと語っているようだが、確かにその通
りの作品ということだろう。そしてその思いが台湾の観客に
も伝わったということのようだ。
その状況は、日本でもあまり変わらないように思えるし、逆
に台湾もそうなのだと改めて思ったりもしたものだが、そん
な気持ちが日本の観客にも伝わればいいと思うところだ。
それにしても台湾って、自転車で1週間で回れてしまうんで
すね…
それから、劇中でモデル役を演じているRuta Palionyteは、
本当にリトアニア出身のスーパーモデルだそうだ。
『ブロークン』“The Brøken”
昨年の11月に『フローズン・タイム』という作品を紹介した
ショーン・エリス監督の長編第2作。前作は短編を引き伸ば
したものだから、最初から長編として企画された作品では、
これが第1作ということになる。
因に、前作の邦題は本作との繋がりを感じさせるが、前作の
原題は“Cashback”で、邦題が似たのは偶然のようだ。
その題名は、breaking a mirrorから来ているもので、鏡が
割れると不吉なことが起こる(イギリスでは7年間不幸が続
くと言われているようだ)という、まさにその通りの物語が
展開される。
その発端は、主人公の父親の誕生日。そこで家族が会食して
いた居間の大鏡が激しく割れて落下する。その場は茶化して
迷信を言い合う家族だったが…。翌日、職場から帰宅しよう
とした主人公は、自分の愛車と同じ車に乗った自分に瓜二つ
の他人を目撃する。
そして、思わずその後を追った主人公は、その車が駐車した
アパートに侵入、自分の住まいとそっくりの部屋にたどり着
く。そしてその帰路、気の動転した主人公は衝突事故を起こ
し、怪我は軽かったが事故前後の記憶を喪失してしまう。し
かもその後、主人公の周囲には次々に怪奇なことが起こり始
める。
前作のちょっとロマンティックな雰囲気からは一転して、本
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07月27日(日)
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