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On the Production
by 井口健二
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■胡蝶の夢、オンリーピック、フレフレ少女、ゲット・スマート、フェルメールを探して、三本木農業高校馬術部、ハルク、攻殻機動隊
因に、美術品盗難事件の多くは金銭の要求などで解決される
ようだが、本件の場合は何故かそれがうまく行っていない。
実際、本作の中で捜索はかなり犯人に近いところまで迫って
いるようにも見えるのだが、そこから先がいろいろ政治的な
ところも匂わせている感じもあって、これは相当に特殊で難
しいケースのようだ。

『三本木農業高校、馬術部』
1999年春から2001年秋に掛けて、実在する青森県立三本木農
業高校であった実話に基づく物語。
全日本学生大会でも優勝経験のある競技馬が難病により失明
寸前となってその農業高校に引き取られる。その問題馬の世
話係になった1年生の女子生徒が、仔馬の出産などの難事を
経て、最後は「私、目になる」と宣言し競技に出場する。
一度は「女王」とまで呼ばれた名馬が目を患う。それは馬に
とっても過酷な試練であり、気性が荒くなってしまうのは当
然なのかも知れない。そんな気難しい馬と対峙しながら少女
は成長して行く。これは正に青春映画と呼べそうな物語だ。
この物語を、『出口のない海』『夕凪の街 桜の国』の佐々
部清監督が映画化した。監督にとっては、特攻、原爆と重い
テーマが続いたので、少し気楽な作品ということだったよう
だが、本作は春、夏、冬と季節に合せて1年間に渡る撮影で
完成されたものだ。
また本作の乗馬、飛越などのシーンは全て若手の俳優たちが
自身で演じており、その特訓は実際の三本木高校馬術部顧問
の先生の指導のもと行われている。ただしその特訓も相当に
激しく、撮影は満身創痍で行われたとも紹介されていた。
この他、卒業式のシーンなども含め、三本木農業高校の全面
的な協力のもと撮影された作品とのことで、その臨場感とい
うか、画面に漂う何とは無しの落ち着きのようなものも、本
作の雰囲気を高めている感じがするものだ。
出演は、主人公を本作がデビュー作の長渕文音が務め、その
周囲を柳葉敏郎、黒谷友香、松方弘樹らが固める。特にこの
4人が実際に行っている出産シーンは見事だった。この他に
は奥村知史、森田彩香、西原亜希、小林裕吉らが共演。
さらに、主人公が競技馬を世話しているシーンには、実話の
名馬タカラコスモスの姿も登場しているそうだ。
ただし、実話で主人公が出場したのは馬場馬術で、映画のよ
うな障害飛越ではない。実際問題として、盲目の馬といくら
人馬一体になっても飛越は無理というもので、その辺はこの
映画の嘘ということになる。しかし、日本の観客に馬場馬術
を見せても理解は困難であろうし、この程度の嘘は許容範囲
かな…?というところだ。

『インクレディブル・ハルク』“The Incredible Hulk”
『アイアンマン』に続くマーヴェルコミックスの独自製作に
よる人気コミックスの映画化第2弾。アメリカでは1977年か
ら82年まで放送され、日本でも79−80年に放送された人気テ
レビシリーズの映画版リメイク。
因にこの作品は、2003年7月2日付で紹介した『ハルク』の
リメイクでもある。ジョン・ウー監督の前作については、僕
はかなり評価したつもりだったが、興行的に期待通りとは行
かなかったようで、その失敗(?)を踏まえての今回の再映画
化となった作品だ。
その前作と本作との最大の相違点は、前作でニック・ノルテ
ィが演じた主人公の父親が出てこないことだろう。その結果
ハルク誕生の物語は簡略化され、単純に実験中の事故という
ことになっているが、その分、本作の物語が判り易くなって
いることは確かだ。
ただし、エリック・バナ、ジェニファー・コネリーが共演し
た前作がかなり哀愁を込めた作品だったのに対して、本作、
エドワード・ノートン、リヴ・タイラー共演のリメイクは、
多少ドライな感じもする。
特に前作で、軍隊に包囲されたハルクをベティが抱きかかえ
るようにして怒りを沈め、巨大化したハルク身体が縮んで行
くシーンは、名シーンとして印象に残っていただけに、それ
が見られなかったのは、ちょっと残念な気もした。
しかし本作では、リオデジャネイロのファヴェーラを舞台に

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07月06日(日)
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