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On the Production
by 井口健二
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■蛇にピアス、おくりびと、ギララの逆襲、ブーリン家の姉妹、窓辺のほんきーとんく、ベティの小さな秘密、背/他2本、P.S.アイラヴユー
して『CALL ME ELISABETH』の題名で紹介した作品が、この
ように改題されてようやく一般公開されることになった。
前回の紹介は、英語字幕しかないDVD上映だったもので、
今回は内容の再確認も兼ねて再度試写を観に行ったが、台詞
等で誤解していたところはなかったようだ。従って映画の内
容については、前回の記事を参照してもらいたい。
ただ、前回は時代背景のようなものが明確に把握できなかっ
たが、今回は劇中で、父親がPARIS MATCH誌の宇宙飛行士が
表紙になっている号を見ていることに気が付いた。これは、
多分ソ連のガガーリンと思われ、ヴォストーク打ち上げの頃
の物語だったようだ。
この他では、前回も紹介したステンドグラスはやはり素晴ら
しいもので、これをスクリーンで再び観られたのも嬉しかっ
た。
そして何より、ベティ(エリザベス)役のアルバ=ガイア・
クラゲード・ベルージ(というのが正式の名前のようだ)を
再び観ることができたのも嬉しいところ。因に彼女は、前回
も紹介した『ぼくを葬る』では、主人公の姉の幼い頃を演じ
ていたそうだ。
共演は、『ふたりの5つの分かれ路』などのステファヌ・フ
レイス、『アメリ』などのヨランド・モロー、『パルプ・フ
ィクション』などのマリア・ド・メデイルシュ。
また、台詞と脚本を担当したのは、2001年『アメリ』、04年
『ロング・エンゲージメント』などのギューム・ローラン。
ジャン=ピエール・ジュネを支える才人がここでも的確な手
腕を見せている。
『背/他2本』
第29回ぴあフィルムフェスティバルで企画賞などを受賞した
作品。上映時間48分の作品だが、同監督の他の2本と併せて
一般公開されることになった。
高校の卒業記念に東京に繰り出した若者が、ふと出会った女
性にちょっかいを出したことから、黄色い靴下の男に追われ
ることになるというサスペンス作品。
スピルバーグの『激突!』から想を得たとのことで、そこに
特徴的な歩き方をする黄色い靴下の男を配して、その足元の
アップ映像で恐怖感を煽るというやり方は、物まねとしては
良くできている。
それにこの種の作品では、その物まねをどこまで捻ってみせ
るかが、後に続くものとして考えなくてはいけないところに
なるが、それも舞台背景を変えるなどいろいろ考えられてい
る感じもして、習作としてはそれなりに評価できるものだろ
う。
ただし物語の展開では、途中何度か時制が飛んでいることに
なるが、その部分のメリハリをもう少して付けて欲しかった
感じはした。特に、クライマックスのシーンは何ヶ月も後の
話になるはずだが、その辺がはっきりしていない。
実際、時制は何ヶ月も飛んで、それでも繰り返される恐怖感
を描いて欲しかったもので、例えば毎回追跡者を倒してほっ
とはするが、重傷を負ったはずのその姿が消えて、それから
しばらくしてまた追跡が始まるとか、そんな見た目の演出も
欲しかったところだ。
それから出演者にはそれなりの人たちを集めているように見
えるが、実はその演技がどれもあまり芳しいものではなく、
監督の技量としてそれを何とかできるようにもなって欲しい
感じもした。
なお同時上映は、じっちゃんの「宝の地図」を巡って中学生
の夏休み最後の冒険を描いた『出発しよう!』(22分)と、
空き巣に入った泥棒が遭遇する恐怖を描いた『闇の巣』(6
分)。
前者にはちょっと素敵な種明かしがあり、後者にはちょっと
スプラッターもある。どちらもそれなりのものは描いる感じ
で、特にファンタシーの志向が見えるところでは、今後の作
品にも期待したいものだ。
『P.S.アイラヴユー』“P.S.I Love You”
2004年にアイルランド元首相の娘が弱冠21際で発表した同名
の処女小説の映画化。
喧嘩もしたが幸せだった若い夫婦の夫が急死し、残されて何
もできなくなった未亡人の許に亡き夫からの手紙が届き始め
る。そこには彼女の境遇を予測し、その時々の彼女を勇気づ
け、未来に希望を持たせようとする亡き夫からのメッセージ
が綴られていた。
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06月29日(日)
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