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On the Production
by 井口健二
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■ハード・リベンジ、俺たちダンクシューター、アイアンマン、レス・ポール、能登の花ヨメ、歌え!パパイヤ、The 11th Hour、空想の森
ゲータイ(歌台)と呼ばれる旧暦7月に行われる祖先の霊を
楽しませる催しを背景にしたシンガポール映画。
旧暦7月に祖先の霊を楽しませるということでは、日本のお
盆に相当するもののようだ。しかしそこで行われるゲータイ
は、これなら祖先の霊も充分に楽しめそうなド派手な歌謡シ
ョウ。そのゲータイの出演を巡って繰り広げられる笑いとア
クションのエンターテインメントムーヴィが展開される。
主人公はパパイア・シスターズと名乗る女性デュオ。2人は
本当の姉妹ではないが、それぞれある事情を持って憧れのゲ
ータイ歌手を目指すことになる。しかしそれは簡単にできる
ことではない。
そんな2人は、彼女らを見出した衣裳作りの名手リンおばさ
んの指導によって、真のゲータイ歌手の座を目指すことにな
るが…そこにはドリアン・シスターズと名告るライヴァルも
現れる。
こんな2人と、彼女らを巡る周囲の人たちの物語が、ド派手
なゲータイステージの再現と共に描かれて行く。
脚本と監督は、2004年のアジア版「TIME」誌で、ドラえもん
など共に「アジアのヒーロー20人」にも選ばれたというロイ
ストン・タン。世界の映画祭で60以上の受賞に輝くという監
督が、ガン死したゲータイの伝説的歌手に捧げるために作っ
た作品ということだ。
という作品の背景もあってか、実は物語は最後にちょっと尋
常ではない結末を迎える。それはゲータイの本来の目的を反
映したものでもあるが、ゲータイのイメージのない我々には
多少衝撃的な結末でさえあった。
しかし、本国では国民の10人に1人が観たというほどの大ヒ
ット作とのことで、その辺はカルチャーの違いを理解しなけ
ればならないところのようだ。
ゲータイというシンガポール特有の文化が、多少の誇張はあ
るにしてもかなり丁寧に描かれている。そんな異国の文化を
理解する上でも参考になる作品と言えそうだ。

『The 11th Hour』“The 11th Hour”
レオナルド・ディカプリオの製作、脚本、ナレーションによ
るエコロジカルドキュメンタリー。温暖化などの地球が直面
する事象を踏まえて、スティーヴン・ホーキング博士や、ゴ
ルバチョフ元ロシア大統領など、50人以上の世界の賢人たち
が意見を述べて行く。
本作は、昨年のカンヌ映画祭でプレミア上映されて話題を呼
んだものだが、ドキュメンタリーとは言いながら、ほとんど
の場面が発言者の姿だけというかなり思い切った構成で、正
直、観る側にもかなりの覚悟が要求される作品だ。
しかし興味を持って観ていれば、各自の言っていることは極
めて判りやすく、誰もが危機感を抱くほどの説得力に溢れた
ものになっている。この辺はさすがに各界のトップの人々と
いうのは意見の述べ方も判っているという感じがした。
しかもこの作品では、恐らくは一度に撮ったであろう映像を
テーマごとに小分けにして、それも判りやすくなるように編
集されており、その辺の構成力にも感心させられるところが
あった。
ただしその編集が、多少作為的に観えてしまうのは残念なと
ころで、さらには題名についても、発言の中ではちょっとそ
の意味のすり替えがあるような感じもして、その辺は策を弄
しすぎたような印象を受けるところもあった。
それに日本版では、それぞれが滔々と喋っているものを字幕
に訳すというのもかなり無理があるところで、できれること
なら吹き替えか、ヴォイスオーヴァのナレーションにして、
発言の内容を正確に理解できるようにして欲しいところもあ
った。
とは言え映画の全体は、危機的な状況をかなり強烈に印象づ
けるもので、その製作の意図は明白に理解できる。しかも、
そこにディカプリオの名前が冠されているのもうまいところ
で、もしかして名前に釣られて観に来た人の目を開かせるこ
とができたら、それは大成功と言えるものだろう。
なお、映画には何点か世界地図が出てくるが、これがいずれ
もヨーロッパが中心のもの。しかしその右端の日本を注目し
て観ていると、例えば海洋汚染では日本近海のレヴェルはか

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06月22日(日)
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