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On the Production
by 井口健二
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■デイ・オブ・ザ・デッド、レッドライン、カンフー・パンダ、12人の怒れる男、1000の言葉よりも、小さい赤い花、TOKYO!
の次回作はユダヤ人のユーモアを題材にしたものだが、同時
にそれは第三次世界大戦にも関連するテーマだそうで、その
作品にも期待したいものだ。
『小さい赤い花』“看上去很美”
中国の幼児教育を描いて、2006年のベルリン映画祭で評論連
盟賞を受賞した作品。
主人公のチアンは4歳の男の子。母親が軍務で地方転属とな
り、空軍パイロットの父親も家を空けがちなことから、幼い
チアンは全寮制の幼稚園に預けられることになる。
ところが、その幼稚園は何もかもが成果主義で、教師が口う
るさく指示を出し、その指示に従えば赤い花が貰え、反抗す
ると花を取り上げられる。そして、その花の数でその子の評
価が定まるという場所だった。
しかし、新入りのチアンにはそんなやり方が判らず、反抗的
でもある彼の評価はどんどん下がって行く。そんな中でも、
チアンは持前の想像力で先生を妖怪に見立てたり、騒ぎを巻
き起こす。そしてそんな彼の想像力は徐々に周囲の子供たち
を巻き込んで行くが…
溝状のトイレに子供たちを並べてしゃがませて、早く排便し
たものに花を与えたり、オネショをした子からは花を取り上
げたり、とにかく画一的な成果主義の教育が展開される。そ
の酷さには驚かされるものだ。
映画には原作があり、その物語は文革前の1960年代初頭を背
景としているようだが、実は中国の幼児教育は今も同じよう
なものなのだそうだ。こんな教育からはイエスマンしか育た
ないようにも思えるが、実際、教育担当者はそれが狙いでも
あるのだろう。
これでは子供の創造性も何もあったものではないが、それが
40年以上も続けられ、それで今の中国の国力があると言われ
れば、仕方ないところもありそうだ。映画に登場する子供た
ちの大半が、それを嬉々として受け入れているのも恐ろしく
感じられた。
でもまあ、この映画はその体制をかなり批判的に描いている
もので、それにはほっとするところもある。脚色と監督は、
2006年1月に紹介した『ウォ・アイ・ニー』などのチャン・
ユアン。以前に紹介した作品も、中国社会に潜在する矛盾が
描かれていたように思うが、それを男女の物語にしてうまく
ごまかしていたものだ。
それは本作でも、子供たちの姿をユーモラスに描くことで、
本当に描いていることへの批判を躱そうという考えはあるよ
うだ。それが中国で映画を作り続けるための知恵なのかもし
れない。難しい体制の中で今も頑張っている監督の作品と言
えそうだ。
『TOKYO!』“Tokyo!”
ニューヨーク在住のミシェル・ゴンドリー監督と、パリ在住
のレオス・カラックス監督、それにソウル在住のポン・ジュ
ノ監督が、それぞれ東京を舞台に撮り上げた3本の中編作品
からなるオムニバス映画。
一つの都市を舞台にしたオムニバスでは、2006年12月に紹介
した『パリ、ジュテーム』の先例があるが、その紹介の時に
も期待した東京が舞台のオムニバスが製作された。しかも今
回は、製作された3本がいずれも本格的なファンタシー作品
という嬉しいものだ。
因に、『パリ…』の中にも吸血鬼ものや、ちょっと異世界も
ののような作品も含まれていたが、ファンタシー度では本作
の方が断然上回っている。そんな嬉しい作品が3本揃えられ
た。
その最初の作品は、『エターナル・サンシャイン』などのゴ
ンドリーの監督で、映画青年と一緒に上京してきた女性を主
人公にしたもの。彼女は都会の生活に疎外感を感じ始めてお
り、それでも彼のために一所懸命に頑張っていたが…
実は、ここからがちょっとびっくりするくらいにファンタス
ティックな展開になっているもので、これには感動させても
らった。出演は藤谷文子と加瀬亮。特に藤谷はかなり体当た
りの演技も見せてくれている。
2作品目は、『ポンヌフの恋人』などのカラックス監督で、
物語は巻頭から『ゴジラ』のテーマが鳴り響き、それに合せ
て下水道から現れた怪人が、銀座通りなどで大暴れするとい
うもの。
この怪人役には、カラックス作品には常連のドゥニ・ラヴァ
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05月31日(土)
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