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On the Production
by 井口健二
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■フールズ・ゴールド、シューテム・アップ、サンシャイン・デイズ、百万円と苦虫女、あの日の指輪を待つ…、シークレット・サンシャイン
ェイト、ブレンダ・フリッカーらが共演している。
『シークレット・サンシャイン』“밀양=密陽”
夫と死別し、幼い息子と共に夫の故郷に引っ越してきた女性
の物語。そこで女性はピアノ教室を開き、夫の遺産で不動産
投資を始めようとしているようだったが…やがて彼女を悲劇
が襲う。
その悲劇で苛まれた心を癒すために彼女はキリスト教に帰依
し、悲劇の基となった犯罪者を許せるようにまでなる。とこ
ろがそれは、彼女に更なる苦渋を与えることになる。
韓国は、いろいろな意味で宗教の強い国だと感じているが、
その韓国映画でのこの宗教の扱いは、無神論者の自分として
はちょっと小気味よくも感じられたところだ。それくらいに
宗教に対して厳しく描いた作品でもある。
もっともこの作品は1980年代に発表された原作小説に基づく
もので、その背景には光州事件にからむ事実があるそうだ。
その辺のことは僕にはよく判らないが、いずれにしても宗教
のいい加減さみたいなものは明白に感じられる作品だった。
ただし物語は、それにもめげずに生き抜いて行く女性と、そ
れを見守る男性を描いている。そしてそこには、「大切なも
のは身近にある」というメッセージが込められていると言う
ことだが…。監督は必ずしもそうとは捉えていないようだ。
つまりこの物語は、メロドラマのようで実はそうではない。
その辺の微妙なところが、見事なドラマを作り上げている作
品だ。そしてそれは、人が人生を生き抜く上での人間の本質
にも迫るものになっている。
従って登場する男女は、必ずしもラヴストーリーを演じるも
のではなく、それぞれの生き方を代表しているものだ。
監督は、2002年『オアシス』が鮮烈な印象を残すイ・チャン
ドン。実は監督は、その後にノ・ムヒョン政権下で文化観光
部長官の要職にあったりして、映画作品はそれ以来の5年ぶ
りとなっている。
主演は、『ユア・マイ・サンシャイン』などのチョン・ドヨ
ン。本作ではカンヌの主演女優賞を受賞している。共演は、
『殺人者の追憶』『グエムル』などのソン・ガンホ。その他
の共演者には、地元の劇団の俳優や素人の人たちが起用され
ているそうだ。
そしてその地元は、実在する「密陽」という韓国南部の地方
都市。実は、原作小説の「虫の物語」には場所は特定されて
いないそうで、映画化に当ってその地名のイメージでこの場
所が選ばれたそうだが、その地方都市の雰囲気が地元の俳優
たちによって見事に再現されている。
04月06日(日)
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