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On the Production
by 井口健二
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■MONGOL、スシ王子!、アウェイ・フロム・ハー、Mr.ブルックス、休暇、最高の人生の見つけ方、1978年冬
最高の人生を楽しもうとする物語。
原題は「棺桶リスト」と訳されているが、死ぬまでにやりた
いことを書き出した人生の目標リストのようなものらしい。
以前にサラ・ポーリー主演『死ぬまでにしたい10のこと』を
紹介しているが、本作はその男版というところでもある。
ただし、本作でニコルスンが演じるのは大金持ちで、それこ
そ金を湯水のごとく使ってやりたいことをする。それは世界
を駆け巡るものでもあるが、時間制限が余命にあることも確
かなことだ。
そう言えば『受験のシンデレラ』も同じような話になるが、
どちらも主人公が金持ちという設定なのは、自分が男性とし
ては多少哀しいところでもあった。でもまあ、男の夢という
のはそんなものなのだろう。主婦が切々と家族を思うのとは
違う物語だ。
それで本作では、スカイダイビングをしたり、ライオン狩り
をしたり…となるのだが。それが描き方によっては、空しさ
になってしまったりもするところを、見事なエンターテイン
メントにしているのも本作の素晴らしさとも言えそうだ。
製作総指揮と脚本のジャスティン・ザッカムは、本作がデビ
ュー作とのことだが、原題と同名の著作があり、その本では
ヒュー・ヘフナーから世界一小さい男性、さらに普通の人た
ちなどにも取材した「棺桶リスト」がまとめられているとの
ことで、かなり深い裏打ちのある作品のようだ。
監督は、『スタンド・バイ・ミー』では少年たちが「死体を
見つける」という目標を達成するまでの冒険を描いたロブ・
ライナー。本作はその延長線上の作品という捉え方もされて
いる。
とは言え本作は、間違いなく名優2人の共演が見所となるも
ので、フリーマンの思慮深さとニコルスンの豪快さが見事に
マッチしている。因にニコルソンは、ライナーと共に台詞の
一つ一つを検討して、作品を練り上げるのにも協力したそう
だ。
一方、フリーマンの「棺桶リスト」のトップは、ニコルスン
との共演だったとか…

『1978年、冬』“西干道”
昨年の東京国際映画祭では、『思い出の西幹道』の題名で、
コンペティション部門に出品され、審査員特別賞を受賞した
作品。
実は、映画祭で観たときにはあまり気に入った作品ではなか
った。主人公の若者のしていることがあまりに愚かで、いた
たまれなかったということがその理由だったように思う。そ
の感想は今回見直しても、さほど変わるものではなかった。
今回の一般公開で題名にもなった1978年は、中国で文化大革
命が終結し、人々に自由が戻り始めた時代であるようだ。し
かし、国家はそうであってもこの映画の舞台のような地方都
市では、中途半端な自由が若者たちを迷わせている。そうい
う時代だったのだろう。
夢を追って若者たちは生きている。でも現実はそんなに甘い
ものではない。団塊の世代である自分のことを考えると、夢
が現実にならないことを知ってしまった世代であって、それ
はしらけ世代などとも言われたものだ。
しかし自分より5歳年上の兄たちの世代は、まだ夢を追って
いたようにも思える。それは僕らから見れば実現するはずの
無いもので、それが疎ましくもあったものだが…。そんな兄
たち姿を、この映画の主人公に見ているような気もした。
時代は日本とは10年ほどずれるのかも知れないが、ちょうど
そんな時代が1978年の中国に一致するのかも知れない。そし
て、その若者たちを多分監督の眼である主人公の弟が、冷静
な眼で見つめているものだ。
その弟の姿も含めて、僕自身には身につまされるところの多
い物語が展開するものであった。その意味では見事な作品で
あることは確かだろう。でも、その部分が僕には辛くもある
ものだ。
脚本、監督は、映画美術家出身のリー・チーシアン。廃虚の
ような建物や工場街を列車が巡回している町は、多分実在の
ものなのだろうが、その独特の雰囲気は見事だった。3本目
の監督作品で、過去の2作品でも受賞歴があるそうだ。
出演者は、ほとんどが映画初出演の俳優たちだが、中でヒロ

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03月23日(日)
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