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On the Production
by 井口健二
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■光州5・18、僕の彼女はサイボーグ、パリ恋人たちの2日間、●REC、ミラクル7号、おいしいコーヒーの真実、歩いても歩いても
ターパン・シンドロームなどとも呼ばれて、映画全体の幼児
性が指摘されたが、本作は比較的大人の目線が保持されてい
て、子供を主人公にしていても幼児性は感じなかった。
その辺がスピルバーグとチャウの資質の違いとも思えるが、
そのどちらが良いかは難しいところだ。従って『ET』のよ
うに、大の大人が涙を流すようなお話にはなっていないが、
逆に大人も安心して楽しめる作品にはなっている。
なお映画のエンディングには、『未知との遭遇』を思い出さ
せるようなシーンがあって、これは同じスピルバーグの作品
に対するオマージュかなとも思わせた。
主人公を取り巻く子供たちにはかなり個性的なキャラクター
が揃っているが、実は、じめっ子役を演じているのも女子、
さらにその用心棒役も女性。一方、主人公を助ける巨漢の女
子の役は男性とのことで、かなり興味深い配役になっている
ようだ。
その他の大人の配役は、ほぼシンチー映画の常連たちが顔を
揃えている。

『おいしいコーヒーの真実』“Black Gold”
世界を巡るコーヒートレードに関するドキュメンタリー。
以前に、世界一美味しいとされるジャマイカ産のバナナが、
最大消費国のアメリカ合衆国に輸出できないという話を聞い
たことがある。それは、世界の食品貿易が一部商社によって
牛耳られており、そこを通さない流通が行えないためだと言
うことだった。
それと同じことがコーヒーにも起きているようだ。
そのコーヒー貿易を牛耳っているのは、クラフトフーズ、ネ
スレ、P&G、サラ・リーの4社。因に、サラ・リー(Sara
Lee)はアメリカの食料品商社で、1999年にMJBなどを買
収したが、2006年に手放しているようだ。本作は2006年製作
の作品になっている。
そして4社は、1989年にWTOの勧告によって国際コーヒー
協定が破棄されて以降、ニューヨーク先物市場においてコー
ヒー豆の価格を暴落させ、コーヒー原作国エチオピアを始め
とするアフリカ諸国のコーヒー農家を困窮に陥れている。
そのコーヒー豆価格の実態は、例えば市価で330円のレギュ
ラーコーヒー1杯に対して農家に渡る金額が3〜9円(1〜
3%)だということだ。またこの価格は、先物市場における
投機筋の思惑のみで決まるため、農家の実情を反映しないと
いう説明もされていた。
そこで、エチオピアでは協同組合を作って、商社を通さず適
正な価格でコーヒーを輸出することが試みられており、その
活動を続ける男性への取材も織り込まれている。
映画の中では、その男性が食料品店のコーヒー売り場でエチ
オピア豆を探すがなかなか見つからず、逆にインスタントコ
ーヒーの原材料の中に含まれているという事実を発見すると
いうエピソードも挿入されていた。
つまり、最高品質とされるキリマンジャロなどのエチオピア
のコーヒー豆が、適正な価格では市場に出回らず、買い叩か
れてインスタントの原料にされているという実態も明らかに
されているものだ。
世界の貿易高で、コーヒーは石油に次ぐ規模とも紹介されて
いたが、石油価格が産油国によってコントロールされている
のに対してコーヒー豆はそうではない。価格協定が公正な貿
易の姿でないことはもちろんだが、コーヒー貿易の歪んだ実
態も良く判るドキュメンタリーだった。

『歩いても 歩いても』
『誰も知らない』などの是枝裕和監督の新作。京浜三浦海岸
の坂上にある元内科医院の家を舞台に、そこに住む両親と、
亡くなった長男の15回目の命日に集まった弟妹の家族たちの
姿を描く。
その家には開業医だった老人の父親と母親が暮らしており、
その家に、家業を継がず外で暮らしている次男の一家と、妹
の一家が訪れる。ただし、主人公である次男は医師ではない
別の専門的な職業に就いているが、その事業はうまく行って
いないようだ。
僕も妹のいる次男で、現在の境遇も主人公に似ている自分と
してはいろいろ考えさせられる作品だった。
ただし次男本人の家族形態は、僕とは異なるのでその点は気

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03月16日(日)
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