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On the Production
by 井口健二
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■ハンティング・パーティ、受験のシンデレラ、なつかしの庭、丘を越えて、ブレス、ブラックサイト、ゼア・ウィル・ビー…、紀元前1万年
ダイアン・レインの主演で、インターネット時代の恐怖を描
いたサスペンス作品。
ウェブで配信される死への生中継。そこには、アクセス数が
増すと死期が早まる仕掛けが施されていた。しかし、66億人
と言われるインターネット人口の好奇心は止められない。ア
クセスした全員が共犯者という連続殺人事件が発生する。
主人公はネット犯罪専門のFBI捜査官。普段は本部の一室
でディスプレー相手に犯罪者を捜査するのが仕事だったが、
ある日、そのディスプレーにkill with meと称する映像が映
し出され、それはやがて連続殺人事件へと進展する。
そのサイトは、ロシアなどに置かれてFBIの手の届かない
ところにあったが、犯行の現場はアメリカ国内。しかも、主
人公の住むオレゴン州ポートランドの近郊のようだった。そ
して、その犯行は徐々に主人公の近くに忍び寄ってくる。
果たして犯人の目的は、そして主人公はその犯行を止めるこ
とが出来るのか…
犯人は技術に詳しいという設定になっているが、その手口は
かなりいろいろなテクニックを駆使した手の込んだもので、
『SAW』の制作者たちが観たら悔しがるのではないかと思
われるような作品だった。
しかも、インターネットとの組み合わせ方もなかなか考えら
れたもので、警鐘を鳴らすという意味でもうまく作られた作
品となっている。一方、主人公の推理力や謎解きも偶然に頼
らない論理的なもので、その部分も気持ち良く楽しめた。
原案・脚本を手掛けたロバート・フィヴォレントとマーク・
R・ブリンカーは共に新人のようだが、着眼点も良いし、そ
こからの物語の発展のさせ方も見事なもの。しかも社会的な
目線もしっかりした感じなのはうれしいところだ。
この種の作品では、とかく反社会的なところを評価したがる
連中もいるが、社会的な目線で撮っても良い作品は出来る。
その意味でもなかなかの作品と言えるものだった。監督は、
1996年『真実の行方』や、2000年公開のSFファンタシー作
品『オーロラの彼方へ』などのグレゴリー・ホブレット。
ただし、殺人の映像に関しては、『SAW』以降のかなり強
烈な描写は踏襲しているもので、その手の覚悟はしてみる必
要はある。R−15指定は当然と言える作品になっている。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
“There Will Be Blood”
ダニエル・デイ=ルイスが1989年『マイ・レフト・フット』
以来、2度目のオスカー主演男優賞を獲得した作品。20世紀
初頭のアメリカで、社会主義の論客としても知られた作家ア
プトン・シンクレアが1927年に発表した長編小説“Oil”の
映画化。
カリフォルニアを舞台に、山師の男が金鉱捜しから油井の開
発へと事業を拡げ、悪どいこともしながら巨万の富を築き上
げて行く。しかし、彼が最終的に得たものは一体何だったの
か…という物語。
映画は、地中に潜って金鉱を探す主人公の姿から始まる。そ
れで現金を得た主人公は、次に石油を掘り始める。それらは
常に死とも隣り合わせの危険な作業だったが、彼は次々に成
功を収めて行く。そんな彼の側にはいつも幼い息子の姿があ
った。
そしてある日、ポールと名告る男から油田の可能性を持った
土地の情報を得た主人公は、息子と共に狩猟と称してその土
地に入り込み、油田の存在を確認する。そこで辺り一帯を地
上げした主人公は、見事に油田を掘り当てる。
こうして富を築いた主人公は地元への還元も忘れず、地元の
人々との友好関係も築いて行くが、そこには一つの問題が残
されていた。それは、最初に訪れた家の息子が司祭を務める
地元の宗教。最初はその存在を無視し続けた主人公だが…
原作の物語は、20世紀初頭に実在したカリフォルニアの石油
王をモデルにした500ページを越える大作ということだが、
映画化では主人公と地元の宗教家との確執に一つの重心を置
いて、ドラマを再構築している。
この宗教家が実に怪しげで、主人公の山師とも五十歩百歩の
存在。この宗教家役を、『リトル・ミス・サンシャイン』で
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03月02日(日)
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