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On the Production
by 井口健二
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■Girl's BOX、山桜、Swedish Love Story、船山にのぼる、花影、妻の愛人に会う、マンデラの名もなき看守、噂のアゲメンに恋をした!
が突然行方不明になって、その足跡を妻の元愛人と共に辿る
話があったと思うが、妻の不倫というのも一般的な題材にな
ってきたようだ。
そこで本作の主人公の夫は、妻の愛人の男に話し掛ける最初
の言葉をシミュレーションするなど、万端整えて妻の愛人の
許へ向かうのだが。そんなことが簡単に出来るはずもなく、
愚図々々と話が進んでしまう。
一方の不倫男は、タクシーの運転手で本妻もいる。そしてそ
の男の車に客として乗り込んだ夫は、遠距離の行く先を告げ
て、2人は長時間を一緒に過ごすことになるのだが…
いわゆる韓流スターの出演もなく、お涙頂戴でもないこの作
品は、韓国映画としては異例の作品と言えるのだそうだ。し
かし、脚本段階で応募された韓国映画振興委員会の支援作品
に選出され、完成後は世界各地の映画祭に出品されて好評を
博したとされている。
結構ドライなユーモアも感じさせる作品だが、主人公たちの
行動はそれぞれ人間の本質を捉えたものでもあり、しかも全
体の雰囲気が実に良い感じで、登場人物に感情移入はあまり
出来ないが、面白く観ることは出来た。
また、ブラックコメディとも言えるこの作品は、時にシュー
ルであったり、いろいろな側面も有している。特にポスター
にもなっているスイカのシークェンスは見事なものだ。それ
らがバランスよく構成されていて、全体の映画の完成度も高
いものに観られた。
脚本・監督のキム・テシクは1959年生まれ、映画監督は本作
がデビュー作となるが、ソウル大学で映画を学び、その間に
日本映画学校に留学して日本映画の助監督で映画界入りして
いる。現在は主に日本や香港でCFディレクターとして活躍
しているそうだ。
多分、そんな経歴が普通の韓国映画とは違う感覚を生み出し
ているのだろう。でもこの感覚こそが世界に通じる感覚なの
だとも思える。日本で人気のいわゆる韓流映画とは一線を画
した作品だ。
なおこの作品は、12月に紹介した『黒い土の少女』などと共
に、2月から渋谷のシアター・イメージフォーラムで行われ
ている「韓国アートフィルム・ショーケース(KAFS)2008」
の1本として4月に上映される。
『マンデラの名もなき看守』“Goodbye Bafana”
1963年から90年まで、27年間に亙って投獄され続けたネルソ
ン・マンデラの看守を務めたジェームズ・グレゴリーの実話
に基づく物語。
マンデラの生地の近くで育ったグレゴリーは、子供の頃には
黒人の少年とも仲良く遊び、そのため彼らが喋るコーサ語も
自然と覚えていた。この知識が認められ、グレゴリーはマン
デラが収監された刑務所で、彼らの手紙の検閲を行う任務に
就くことになる。
そして妻と2人の子供と共に、ケープタウン沖のロベン島の
刑務所に着任したグレゴリーは、職員たちの住居街の一角で
暮らしを始める。ただしこの時のグレゴリーと妻は、典型的
な白人夫婦であり、アパルトヘイトによる恩恵を信じていた
が…
検閲のために読むマンデラの手紙や、マンデラと妻との面会
に立ち会う内、彼の心にはいつしかアパルトヘイトを始めと
する現政権が進める政策に対する疑問が生じ始める。
この作品は、マンデラが初めて公式に彼自身の姿を描くこと
を認めた作品ということだ。ただしこの作品はマンデラの功
績を描くものではない。それよりもこの作品では、アパルト
ヘイトの真の恐ろしさが明確に描かれているものだ。
それを体現しているのがグレゴリーの妻で、この妻は「黒人
と白人の区別は神様がお決めになった」と発言して憚らず、
2人の子供にもそういう教育を続けている。そして黒人を刑
務所に入れることによって自分たちが安全になると信じてい
るのだ。
この妻役を、『ナショナル・トレジャー』などのダイアン・
クルーガーが演じていて、これは見事に填っている。因に、
クルーガーは、存命の妻本人にも面会して役作りをしたそう
だが、このようなことを平気で言えた理由としては、「真相
を知る術が全くなかったため」と教えられたそうだ。
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02月24日(日)
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