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On the Production
by 井口健二
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■バンテージ・ポイント、カフェ代官山、愛おしき隣人、告発のとき、ラフマニノフ、ねこのひげ、恋の罠、チェスト!
作のシーンは別にしても、もう少し音楽を聞きたかった。
因にラフマニノフは、ドから1オクターブ上のソまで届く巨
大な手の持ち主で、ラフマニノフの和音と呼ばれる特別な奏
法も編み出したそうだ。それを聞いて、昔に観たアメリカの
テレビシリーズにそんなエピソードのあったことを思い出し
た。本作には全く関係のない話だが、そんな影響も残すほど
の人物だったようだ。

『ねこのひげ』
『力道山』や『THE JUON』などにも出演しているバ
イプレーヤーの大城英司が、自らの企画・製作・脚本・主演
で作り上げた作品。
それぞれが離婚あるいは別居して同棲を始めた男女の物語。
女性はキャリアウーマンで子供もいなかったが、男性は2人
の幼い子供を妻の許に残している。そんな男女と、彼らを見
守る周囲の人々の姿が、細かいエピソードの積み上げによっ
て描かれる。
作品は時間の前後が逆転して描かれたり、同じようなシーン
が男女のそれぞれにあったりと、いろいろトリッキーな構成
もされているが、全体的にはちゃんと整理されているという
か、良く練れらていて違和感もなく、気持ち良く観ることの
できる作品だった。
まあ、自分自身がこういう境遇にたち至ることはもはや無い
とは思うが、現実に離婚社会の現代を考えるとありそうな物
語ではあるし、そうなったところでの思いも拠らない事柄が
提示されて、なるほどなと思わされるところも多かった。
そういった意味では、いろいろ勉強にもなる作品だったとも
言えそうだ。実際、離婚が周囲に与える影響の深さなど、今
まで考えもしなかったことが提示されると、それなりに考え
てしまうところも多々あったものだ。
そんな事柄がうまく描かれた作品で、この脚本のどこまでが
実体験に基づいているか知らないが、丁寧な取材というか、
それなりの何かがあったのかなとは思わせる作品だった。つ
まりそれくらいに現実味が感じられた作品ということだ。
共演は、『愛の予感』などの渡辺真起子。他に、仁科貴、蛍
雪次朗、根岸季衣、藤田朋子、川上麻衣子ら現代日本映画の
バイプレーヤーたちが脇を固めている。
監督は、2000年に大城主演の『ある探偵の憂鬱』を自主製作
した矢城潤一。本作も自主製作の作品で、製作は2005年だが
2008年春に一般公開される。
ただ、本作はディジタルヴィデオで撮影され、公開もヴィデ
オで行われるようだが、試写会ではプロジェクターとの相性
もあるのか画質が芳しくなかった。特にハイライトの右側に
影響が出ていたようで、本上映がどうなるかは判らないが、
これはかなり気になった。

『恋の罠』“淫亂書生”(韓国映画)
2003年『スキャンダル』などの脚本家キム・デウによる初監
督作品。『シュリ』『ユゴ』などのハン・ソッキュが主演、
韓国では2週連続の興行第1位を記録、観客動員250万人を
越える大ヒットとなったそうだ。
韓国・李朝を時代背景に、実直と思われていた官吏が淫靡な
小説の戲作者となり、市井を席巻するベストセラーを作り出
す。ところがそれは王妃も巻き込んだ一大スキャンダルへと
発展し、飛んでもない事態を引き起こす。
一応の物語は知った上で試写会に出掛けたが、男性としては
思わずニヤリとする展開の連続で、予想した以上に面白い作
品だった。特に主人公がいろいろ淫乱な考えを捻り出すのが
愉快で、「いやあ、男って根っからスケベなんですね」とい
う感じのものだ。
このスケベ男を、ハンが実に楽しそうに演じているのも嬉し
くなった。共演は、王妃役に子役出身のキム・ミンジョン、
小説の版元役に『親切なクムジャさん』などのオ・ダルス、
さらに個性派俳優のイ・ボムスが挿絵画家を演じている。
主人公が挿絵画家に場面の説明をするシーンでは突然愉快な
VFXが使われたり、一方、かなり激しいアクションや拷問
シーンなども登場して、何しろ見せたいものはとことん追求
されている。
その他、当時の小説の流布の様子なども丁寧に描写され、ま
た李朝の豪華な衣裳や建物、いろいろな風物なども見事に再

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02月10日(日)
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