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On the Production
by 井口健二
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■桃まつり真夜中の宴、フィクサー、燃えよ!ピンポン、アメリカを売った男、ブラブラバンバン、NAKBA、王妃の紋章
コフスキーの「花のワルツ」、ボロディン「ダッタン人の踊
り」、ラヴェル「ダフニスとクロエ」など、いろいろな曲が
演奏される。
その演奏は、1曲を除いて専門の演奏家が吹き替えており、
音楽自体は聴き易く演出されている。でも出演者たちの指使
いなどもけっこう様になっていて、それは落ち着いて楽しめ
たものだ。特に、丘の上の演奏でパーカッションが入ってく
るところは感動的だった。
脚本・監督は、2001年『青の瞬間』がヒューストン国際映画
祭で受賞している草野陽花。プレス資料に掲載されたプロダ
クションノートを監督が書いているが、監督自らこれを書く
のは珍しいこと、それだけ気持ちの入っている作品と言えそ
うだ。
『NAKBA−パレスチナ1948−』
フォトジャーナリストの広河隆一の撮影・監督・写真による
パレスチナ難民の姿を描いたドキュメンタリー作品。
歴史の授業では、単に1948年に建国、その裏ではイギリスが
手引きしたとだけ教えられるユダヤ人国家の誕生。しかしそ
のとき、どうやってパレスチナ人を追い出したのかずっと疑
問だった。その疑問にかなり明白に答えてくれる、そんな感
じの作品だ。
1943年生まれの広河は1967年にイスラエルに渡り、ユダヤ人
パレスチナ入植者による社会主義的な共同体キブツで暮らし
ていた。彼がいた共同体はキブツダリアと呼ばれ、その近く
には白い石が散乱し、サボテンの生えた小高い丘があった。
しかしその場所の由来について、ユダヤ人たちは訊いても言
葉を濁していたそうだ。
そんな広河は、イスラエルによる周辺国への侵攻を目の当り
にして、ユダヤ人によるパレスチナ占領に反対するユダヤ人
の組織マツペンに参加する。そのマツペンの資料から、その
場所がかつてダリアトルーハと呼ばれたパレスチナ人の村の
跡であったことを知る。
1982年、レバノンのパレスチナ難民キャンプでの大虐殺を、
その直後に取材した広河は、その報道によってフォトジャー
ナリストとしての地位を確立する。そしてそのキャンプで出
会ったパレスチナ人一家の生活を追いながら、広河は入植地
に消えた村の調査を開始する。
その調査の過程で、そのような村がイスラエル全土で420も
あったことが判明。やがて、生き残りの村民たちの口から当
時の出来事が語られ始める。NAKBAとは、ヘブライ語で
「大惨事」という意味だそうだ。
1948年、その場所では、国家による「民族浄化」に等しい殺
戮が行われた。ホロコーストを生き延びたユダヤ人が、何故
そのようなことをできたのか。そんな疑問を挟みながら、そ
のNAKBAが今も続いている現実が綴られて行く。
取材は、2006年分まで写し出されるが、最近の部分でもパレ
スチナ難民キャンプの廃虚と化した惨状が描写されている。
それ以前の部分でも、生々しい遺体なども写し出され、いろ
いろな意味での現実が突きつけられる作品だった。
もっと「消えた村」のことを中心に編集して、それ以外のパ
レスチナ人姉妹の話などは別の作品にしても良かったような
気もする。しかし、それでは観客が制限されてしまいそうで
もあるし、この辺のバランスが良いのかも知れない。
より詳しく知りたい人には、写真展なども併せて開催される
ようだ。
『王妃の紋章』“満城尽帯黄金甲”
『HERO』『LOVERS』のチャン・イーモウ監督が描
き出す中国歴史絵巻。
西暦618−907年に栄えた前唐に対して、五代十国に織り込ま
れる後唐は923−936年の短命に終ってしまう。それは堕落と
戦争、政治的な陰謀に満ちた混乱の時代であった。しかしそ
の一方で、前唐の栄華を引き継ぐ宮殿は、黄金にあふれた豪
華絢爛の世界でもあった。
そんな宮殿を背景に、国王と王妃、前王妃の息子(皇太子)
と現王妃の息子(第2王子)などが、権力の座を目指して陰
謀や戦いを繰り広げる。
国王は、宮廷医に命じて病気がちの王妃にいろいろな煎じ薬
を飲ませていたが、その薬には謎があるらしい。一方、王妃
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02月03日(日)
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