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On the Production
by 井口健二
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■裸足のギボン、デッド・サイレンス、ビルマ/パゴダの影で、窯焚、ジェリーフィッシュ、軍鶏、死神の精度、靖国
人気漫画の映画化で、脚本を橋本が担当、舞台も登場人物も
日本という設定だが、監督と出演者の大半は中国人で、台詞
もすべて広東語という作品になっている。
同様の作品では『頭文字D/The Movie』がすでにあるが、
日本製コミックスのある種のケレンは香港映画の方が似合う
感じもする。しかも本作は典型的な格闘技もの。ちゃんと身
体を動かせる香港俳優を使うのも、必要なことだったと言え
そうだ。
物語の主人公は、16歳で両親を殺害した若者。少年院に入れ
られるが、そこでも親殺しの罪は別格として迫害を受ける。
そんな主人公は、首相暗殺で捕まった過激派右翼の空手家に
よって救われ、身体を鍛練して社会に戻される。そして行方
知れずになった妹を探すが…
やがて裏社会で名を売るようになった主人公だったが、彼の
生活は組織の間で翻弄され、その証として総合格闘技大会で
の覇権を目指すことになる。そのためには、前に立ち塞がる
相手を敵味方かまわず倒さなければならなかった。
この主人公を、『インファナル・アフェア』や『頭文字D』
にも出ていたショーン・ユーが演じ、彼を指導する日本人空
手家役に、『インファナル・アフェア』でも共演のフランシ
ス・ンが扮する。
また、日本人格闘家で香港映画『忍者』などに出演した魔裟
斗やハリウッド版『呪怨』などの石橋凌も出演しているが、
彼らの台詞もすべて広東語に吹き替えられているものだ。他
には台湾出身のディラン・クォや、『カンフーハッスル』の
ブルース・リャンも登場する。
地名やキャラクターの名前も全部日本語なのに台詞が日本語
でないというのは、本来なら違和感を感じるのだろうが、彼
らの身体の動きを見ていると納得できるし、それはそれで面
白くもあった。
なお、公開はゴールデン・ウィークで、その時には日本語吹
き替え版になるのだろうか…

『Sweet Rain 死神の精度』
2005年発表の伊坂幸太郎原作「死神の精度」の映画化。
この物語の死神は、不慮の死を遂げる人の許にその7日前に
現れ、その人がその死に値するか否か、つまり不慮の死を実
行するか、見送るかを判定するという設定。
ところが本作で金城武が演じる死神は、常に「実行」の判定
を下し、今までは「見送り」の判定をしたことはなかった。
その死神の今回の判定の対象者は若い女性、彼女は今までに
愛した人がすべて早死にし、その哀しみの中で人生を送って
いた。
そんな中でも必死に生きてきた彼女だったが、彼女の人生が
好転する兆しはない。そして死神は、彼女にも「実行」の判
定を下すつもりで、最後の7日間を彼女と共に過ごすことに
するのだが…
死神は、彼が人類最大の発明と考えるミュージックが大好き
で、特に近年は、暇なときにはCDショップに入り浸って試
聴版のミュージックに聞き入っていた。そしてその場所は、
いろいろな人々の判定に携わっている死神たちの情報交換の
場でもあった。
3つの時代、3つの場所を背景に、それぞれの物語が展開す
る。その最初の物語で死神が下した判定、それは時代を越え
ていろいろな出来事の連鎖をもたらして行く。果たして死神
の下した判定は正しかったのか…?
ささやかな幸せ、そんな言葉がお似合いのささやかなドラマ
が展開する。歴史が激動するような大袈裟な物語が展開する
訳ではない。でも何かが心に残る、そんな暖かい物語が描か
れる。
伊坂原作の映画化は3作目のようだが、最初に観た作品は、
何と言うか物語全体が空回りしている感じで、あまり良いと
は思わなかった。しかし今回は、設定そのものには多少無理
も感じたが、物語自体はメルヘンとして良い感じのものに思
えた。
金城以外の出演者は、小西真奈美、富司純子、光石研、それ
に『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』などの石田卓也。
監督は、漫画家、作家でもある筧昌也、脚本は筧と小林弘利
の共同執筆。物語は、1985年と2007年、そして2028年へと広
がり、因果の巡る話でもある。

『靖国』

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01月27日(日)
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