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On the Production
by 井口健二
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■永遠の魂、タクシデルミア、黄金の羅針盤、恋する彼女西へ、トゥヤーの結婚、アメリカン・ホーンティング、結婚しようよ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『永遠の魂』“별빛 속으로”
昨年の東京国際映画祭「アジアの風」部門でも上映された作
品。実はその時にも見ているのだが、物語が複雑で容易に理
解できなかった。そこでもう1度見直して今回紹介する。た
だし、物語は理解できたつもりだが、かえって解釈に迷うと
ころのある作品だった。
物語の主人公は、大学で教鞭を取る中年の教授。ある日、彼
の前に2匹の蝶が現れ、それに誘われるように教室へと向か
う。そこには何人かの学生がいて彼に初恋の話をせがむ。そ
して彼は、20年前のまだ上京したてで内気な大学生だった頃
の話を始める。
ドイツ語科の学生だった彼は、ある日、教室で奇矯な態度を
取る1人の女学生と出会う。年上の彼女に仄かな恋心を持っ
た彼だったが、学内で行動を共にする内、突然彼女は自殺を
遂げてしまう。そしてその日から、彼の周囲に不思議な事が
起こり始める。
死んだはずの彼女が目の前に現れ、彼にアルバイト先を紹介
する。それは先輩男性の妹の家庭教師だったが、先輩は自分
のことは妹に話すなと指示する。そして、長いエントランス
を持ち、居間にはビリヤード台のある屋敷での家庭教師が始
まるが…
1980年代が背景なのだろうか、朝鮮半島はまだかなりの緊張
状態にあるらしく、突然、市内に空襲警報が鳴り響いて対空
砲火が始まったりする。また、毎日夕方には国旗降納の放送
が行われ、その間は全員が直立不動で国旗を見つめなければ
ならないようだ。
そんな中で、屋敷に1人で住む謎めいた少女と、主人公との
不思議な恋物語が始まる。
実は、主人公とその少女は対空砲火の流れ弾で死亡して、そ
の後の49日間を地上で過ごしている間の話だというのだが、
その後にどんでん返しがあって彼らは現世に戻される。その
辺の経緯が不明瞭で、どうやら兄と自殺した女学生の思惑が
あるらしいのだが…
これが単純に2人を引き合わせるだけのことなら、回りくど
いだけの話でしかもその間の妹の所在が変なことになる。結
局、映画を解釈しようとしても、その辺りの辻褄合わせがう
まくできなくなってしまったものだ。
ただ、中年の教授のエピソードを見ると、主人公は人々の死
と生を司る能力を備えているようで、それは、ジャン・コク
トーの『オルフェ』を思い出させるオートバイの登場でも暗
示されている感じがした。
結局、主人公は死と生を司る能力を持っているがそれに気付
いておらず、少女の兄と自殺した女学生がそれを気付かせる
ために工作した物語という解釈が成立しそうだが、それで良
いのだろうか。
出演は、いずれもテレビ出身で、主人公は日本でも人気があ
るというチョン・ギョンホ、それにキム・ミンソン、チャ・
スヨンの女優陣が共演している。また、ミュージシャンのキ
ム・Cが出演して主題歌も提供しているものだ。
因に、監督のファン・ギュドクは韓国映画アカデミーの第1
期生で、現在はそこで教鞭を取る傍ら作品を発表しており、
特に溝口健二監督の『雨月物語』を敬愛しているそうだ。
なお本作は、以前に紹介した『黒い土の少女』『俺たちの明
日』などと共に、「韓国アートフィルムショーケース2008」
の1本として公開される。
『タクシデルミア』“Taxidermia”
2007年の米アカデミー賞外国語映画部門にハンガリー代表と
してエントリーされた作品。因に、脚本はNHK/サンダン
ス映画祭に出品され受賞したもので、本来、受賞作の映画化
には出資と、日本公開を手掛けるNHKが、本作ではそれを
拒否したとのことだ。
題名は「剥製師」という意味だそうで、映画ではその剥製師
にまつわる親子3代の物語が綴られる。その最初は、祖父の
物語で、雪に閉ざされたとある屋敷に一兵卒として駐留する
男の行状が描かれる。
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01月20日(日)
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