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On the Production
by 井口健二
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■プライスレス、スルース、ジェシー・ジェームズ…、いつか眠りにつく前に、つぐない、ぼくたちと駐在さんの700日戦争、フランチェスコ
と真実とを対比させる演出は見事に決まっていた。
監督は、『プライドと偏見』でもキーラと組んだジョー・ラ
イト。本作が2作目だが見事な演出ぶりだ。
また、物語の第2部ではダンケルク撤退作戦が出てくるが、
ここでは1964年製作ジャン=ポール・ベルモンド主演のフラ
ンス映画を思い出した。同作では主人公が1個のジッポに油
を入れるためにドラム缶に穴を開けるシーンが印象深いが、
本作でもジッポへの言及があるのは気に入ったところだ。
そして映画の最後では、ヴァネッサ・レッドグレイヴが登場
して物語を締め括ってくれる。実は同じ日に『いつか眠りに
つく前に』と続けて観て、その演技を堪能させてもらった。
因に、このシーンでインタヴュアーを演じているのは映画監
督のアンソニー・ミンゲラだそうだ。
サウンドトラックにはタイプライターを叩く音が執拗に挿入
されて、観る側にも緊張感を与え続ける。そしてその緊張感
の中で、見事なドラマの展開する作品だった。

『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』
最近流行りのブログ小説からの映画化。
ケータイ小説というのは、映画化された作品を観てもあまり
感心できないものが多いが、ブログというのはそれなりに文
章を綴っている訳だから、面白いものも出てきてもおかしく
はない。そんな訳で期待も半分で観に行った作品だったが、
これが期待以上に面白かった。
物語の背景は1979年。インベーダーゲームが大流行の時代。
田園広がるとある町の交番に、1人の駐在が赴任してくる。
その駐在は早速下り坂の道に計速機を設置してスピード違反
の取り締まりを開始する。そして、そこをバイクで通り掛か
った高校生が引っ掛かり停学処分を受けてしまう。
でも本来、下り坂でスピード違反の取り締まるというのもず
るい話。そんな訳で主人公の仲間たちが駐在の取り締まりの
妨害作戦を開始する。それは、例えば自転車でスピード違反
をしてみせたり、大きな金物を持って練り歩き計速を妨害し
たりと言うもの。この事態に駐在は、取り締まりを一層強化
するのだが…
この他にもいろいろ行われる高校生たちの妨害作戦というの
が結構良い線を行っていて、違和感がないというか単純に楽
しめる。それに対して、駐在が取る対抗策もそれなりに理に
叶っている感じで、全体的なバランスも悪くなかった。
そしてこの物語に、駐在の美人妻やその大学生の妹、さらに
難病の少女なども加わっていろいろ話が進んで行くのだが…
それらも取って付けたような感じもなく、無理なく展開され
ていて、観ていて気持ちの良い作品だった。
脚本は「ココリコ」のヴァラエティ番組などを手掛ける福田
雄一、監督は『時効警察』の塚本連平という顔ぶれだが、テ
レビ関係者の作品にしては珍しく、真面目に「映画」が作ら
れている感じがした。
出演は、高校生側が『チェケラッチョ!!』などの市原隼人を
中心に、石田卓也、賀来賢人らの面々。一方、駐在役に佐々
木蔵之介、その妻役に麻生久美子など、最近の日本映画では
安定した顔触れが揃っている。また、石野真子、竹中直人ら
のゲスト出演者も良い感じで納まっていた。
さらに、時代背景に合わせた交番、主人公たちの部屋のポス
ターや、挿入される当時のヒット曲(石野真子もある)も楽
しめた。
原作は読んでいないが、原作の良さが素直に活かされたとい
う感じの作品。これができる監督たちには、さらなる映画づ
くりを期待したいものだ。なお、今回映画化されたのは発端
から150日分だそうで、あと550日分の物語はあるようだ。

『フランチェスコ』“Francesco”
『愛の嵐』などのリリアーナ・カヴァーニ監督が、12世紀の
イタリアの聖人「アッシジのフランチェスコ」の生涯を描い
た作品。
本作は、1989年のカンヌ映画祭のコンペティションに出品さ
れ、日本では翌1990年7月に一度公開されているが、その時
は上映時間135分の短縮版での上映だった。今回は、157分の
ノーカット版で公開される。
因に、映画のデータベースによるとイタリア公開版の上映時

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12月30日(日)
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