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On the Production
by 井口健二
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■明日への遺言、Mr.ビーン、テラビシア、アメリカン・ギャングスター、勇者たちの戦場、そして春風にささやいて、トリコン、黒い土の少女
つまりこの2本は、一方は政治中枢での闘い、他方は市井の
闘いということで、見事に対比される作品となりそうだが、
いずれも今のアメリカが抱える問題を描いたものになってい
るようだ。
製作は2作ともミレニアム。今までどちらかと言うとアクシ
ョン専科のインディーズ系という認識の映画会社だったが、
認識を改めることになりそうだ。
『そして春風にささやいて』
角川ルビー文庫から発行、ごとうしのぶ原作による映画化。
原作はコミック化などもされているようだが、いわゆるイケ
メンキャラクターばかりの物語ということで、そのキャステ
ィングから大変だったということだ。
物語は、全寮制の男子学園を舞台にしたゲイものといってし
まうと身も蓋もないが、そんな学園に迷い込んだ主人公が、
先輩の庇護の元、徐々にその環境の中に溶け込んでゆく様子
が描かれる。
主人公は、音楽の天才だったらしいが、家庭内の問題でその
志を封印し、その学園に来ている。そして1年目は、比較的
目立たないルームメイトと大過なく過ごしたようだが、2年
目になって、校内のあこがれの的の先輩が同室者となる。
これによって主人公は、他の学友たちの反感を買うことにな
るのだが…
僕は基本的に男性であるし、性癖も男性より女性の方が好き
な方なので、イケメンの評価も良くは判らないし、まして男
同士の恋愛シーンというのが女性にどのように評価されるの
かも判らない。
でもまあ、この映画に描かれている世界というのは、青春も
のとして単純に評価もできるし、その線では、他愛ないもの
ではあるが、若い女性に評価されるのだろうなあという感じ
はしてくるものだ。
脚本は、金杉弘子。去年評価した『スキトモ』も、一部にゲ
イを描いてはいたが、本作はさらに一歩進んでいる。とは言
え、僕は、この脚本家には『君にしか聞こえない』のような
作品を、もっと見せてもらいたいとも思っているが。
その出演者は、柳下大、加藤慶祐、齊藤ヤスカ、滝口幸広、
牧田哲也、坂口りょう、相葉弘樹、羽多野渉。これだけで判
る人には判ってしまうのだろうな。
公開は22日から渋谷のイメージフォーラムで、連夜21時から
のレイトショウ。その後全国に展開されるようだ。
『トリコン!!!』
横浜を舞台に、3人の若者が集まる探偵事務所を巡る物語。
横浜が舞台の探偵物、刑事物というのは、映画やテレビでも
いろいろあったと思うが、東京とは違ったエキゾチックな雰
囲気があって良いものだ。東京は捜査何課のような組織で動
く物語が合っているが、横浜が舞台だと、刑事物でも小規模
なグループで、ちょっと規格外れの刑事などがよく似合う。
そんな横浜を舞台にしたこの作品では、主人公は孤児院で育
った3人の若者。それぞれ過去は捨てて、お互いもエース、
ジャック、キングと呼び合っている。そんな彼らが開業した
探偵事務所だったが、探偵の仕事の依頼はまだなく、来るの
は便利屋のような仕事ばかり、しかも宅配ピザの間違い電話
もしょっちゅうという有様。
それでもバラ色の将来を夢見ている彼らの許に、ある日幼い
少女が紛れ込んでくる。その少女は彼らをパパと呼び、3人
はお互いに隠し子ではないかと疑ったりもするのだが、やが
てその子が仕事の依頼第1号をもたらすことになる。しかし
それは、彼らの過去にもつながるものだった。
とまあここまで書いて「そんな大げさな話ではないよ」とい
う声がどこからか聞こえてきそうだ。実際、話はここから、
放浪の画家や彼の描いた絵の行方の捜査などに進み、そこに
地元の顔役らしい人物が登場したりもするのだが、全体的に
は軽いし、どうってことのないところに終始してしまう。
でもそれは、多分この映画の作者たちの狙いなのだろうし、
そういうことを理解してやれば、それほど気にもならない物
だった。
監督は、2006年『ケータイ刑事 THE MOVIE』の佐々木浩久。
正直に言って前作は、僕は評価しなかったもので、本作もそ
の流れを汲むものではある。しかし、前作のような悪趣味な
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12月20日(木)
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