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On the Production
by 井口健二
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■線路と娼婦とサッカーボール、歓喜の歌、ミスター・ロンリー、アディクトの優劣感、裸の夏、カンナさん大成功です!、SS
最多12部門にノミネート、主演女優賞を受賞した。
美声を駆使して人気アイドルの影の歌声を支えてきた女性。
彼女はプロデューサーらの信頼も勝ち得ていたが、体重95kg
の巨漢で、舞台裏で歌いながら床を踏み抜いてしまうことも
…そんな彼女が、一念発起、愛するプロデューサーのために
整形美人になるが。
主演のキム・アンジュンは、映画は脇役の経験しかなかった
ようだが、テレビのヴァラエティ番組などを経て抜擢。整形
後の姿が本来の彼女は、毎日4時間の特殊メイクで変身して
この役に挑んだということだ。
因に、この特殊メイクは、『デアデビル』や『チャリーズ・
エンジェル/フルスロットル』などのハリウッドで活躍する
専門家チームが手掛けている。
原作者の鈴木由美子も自らの整形を公言しているそうだが、
日本では多少の違和感のある美容整形も、韓国では、特に映
画俳優は整形が前提というくらいのお国柄とのことで、日本
以上にこの作品への理解度は高かったようだ。
ということで、この作品も最高の条件での映画化になったと
言えそうだが、それ以上に、登場人物たちの感情的な縺れな
どが丁寧に描かれていて、さすがにラヴコメ王国韓国映画の
実力が発揮された作品とも言える。
脚本・監督のキム・ヨンファは本作が長編2作目ということ
だが、特に主人公の内面描写や、認知症の父親との関係など
も丁寧に描かれていて、その視点の鋭さはコメディの中に見
事な味わいを加えている。それに犬の扱いも良かった。
なお、巻頭とクライマックスに登場するコンサートシーンの
撮影は、韓国でもトップクラスのミュージシャンが公演する
オリンピック体操競技場で行われ、その経費に3億ウォンが
掛けられたという本格的なもの。特に舞台裏でのトラブルに
絡めた緊迫のシーンは見事に演出されていた。また、このシ
ーンの歌唱はキム本人のものだそうだ。
『MUSA−武士−』などのチュ・ジンモが共演している。
『SS』
東本昌平原作による同名のコミックスを、哀川翔主演で映画
化した作品。
原作のコンセプトは、“疲れたお父さん”を応援する自動車
マンガなのだそうで、日銀の発表が何を言っているのか…と
いう感じの今の時代に、不況感一杯の中高年にはピッタリの
作品と言えそうだ。
哀川扮する主人公は、町の修理工場で働く自動車修理工。し
かしその修理工場も仕事がなく、閉鎖の時期が迫っている。
そして主人公は、社長から裏にあるクルマを退職金代りに譲
ると言われる。それは、三菱スタリオンだった。
一方、テレビでは遠藤憲一扮する人気自動車評論家の栗原が
自動車と人間の関係を語っている。しかし、彼にもどこか覚
めたところがある。そして彼は恋人から、箱根スカイライン
で新しいラップを刻んだ男の存在を教えられる。
顔を見せないその男の正体は不明だったが、その男の操る車
種が三菱スタリオンだったことから、1981年の映画『キャノ
ンボール』でジャッキー・チェンが乗っていたことの連想で
ジャッキーと名付けられていた。そして栗原には、その男が
誰であるかは明らかだった。
1981年から86年まで実施されたグループBによるラリーレー
ス。それは、各社が研究開発したモンスターマシンで挑む究
極のラリーレースだった。
その舞台を目指して開発された三菱スタリオン4WD。しか
し、開発半ばにしてグループBによるレース競技は廃止され
る。そんな不運の車種を中心に据えて、夢半ばにして潰えた
目標に再度挑戦しようとする男たちを描く。
映画の前半では、主人公と取り巻く日本の不況ぶりが描かれ
て共感を呼ぶ。そんな現実感のある脚本を『交渉人 真下正
義』の十川誠志が描き、『アンフェア the movie』の小林義
則が監督した。2人ともテレビ絡みの脚本家、監督だが、そ
れなりに現実感の伴う仕事ぶりは良い感じだった。
なお、映画には、スタリオンの他に、ポルシェケイマン、ス
バルインプレッサ、フォードフォーカス、トヨタカローララ
レビン、日産スカイラインGT−Rなども登場する。そして
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11月30日(金)
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