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On the Production
by 井口健二
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■ディセンバー・ボーイズ、ビー・ムービー、潜水服は蝶の夢を見る、魁!!男塾、スリザー、ベオウルフ、ブラザー・サンタ
教的な考えから、その教義に合わない部分が削除されたとい
う説もあるようだ。
このため現在に伝わる叙事詩では、事件の発端や背景もはっ
きりしていないし、話が突然半世紀も飛んでいたり、物語全
体の辻褄も合っていないとのことだ。
その叙事詩に対して、今回の脚色を行ったニール・ケイマン
(映画『スターダスト』の原作者)と、ロジャー・エイバリ
ー(映画版『サイレント・ヒル』の脚本家)の2人は、まず
事件の発端から説き起こし、50年以上に渡る主人公の葛藤を
見事に描き出した。
それは、怪物の母である妖艶な女性を巡る壮大な呪いの物語
として再構築され、さらに先王とベオウルフ、先王の王妃ら
を巡る見事な人間ドラマとしても描かれている。
従って、本来の『ベオウルフ』の物語とはちょっと話が違う
という意見もあるようだが、脚本家たちは、この解釈が学術
的に論議されることも期待しているようだ。
なお、今回の映画化は、ゼメキス監督の『ポーラー・エクス
プレス』と同じくパフォーマンス・キャプチャーで製作され
たもので、それぞれのキャラクターは全て俳優自身の演技を
反映して描かれている。
つまり、ベオウルフ役のレイ・ウインストン、先王役のアン
ソニー・ホプキンス、王妃役のロビン・ライト・ペン、怪物
役のクリスピン・グローヴァ、母親役のアンジェリーナ・ジ
ョリー。さらにアリソン・ローマン、ジョン・マルコヴィッ
チらは、声優だけでなく、自らの演技でキャラクターを演じ
ているものだ。
そしてその演技に、さらにCGIによるアクションが加えら
れて、怪物との壮絶な闘いやドラゴンの飛行シーンなどが描
かれた。
また、今回の製作は3D上映も念頭に行われたもので、実は
試写会は2D上映だったが、随所に3D効果を狙っていると
思われるシーンもあって、3D上映が行われたら再度鑑賞し
たいと思わせた。
その3D上映は、日本ではなかなか進んでいなかったものだ
が、実は本作の公開に合わせてワーナーマイカルが全国20館
の3D化を発表している。本作は、全米では700館を超える
3D上映が実現したそうだが、ようやく日本も少し気運が盛
り上がってきたようだ。
『ブラザー・サンタ』“Fred Claus”
アメリカでは毎年、各社持ち回りのように1本は公開される
クリスマス・ムーヴィ。日本ではなかなか公開の機会はなか
ったが、去年ディズニーの『サンタクローズ3』に続いて、
今年はワーナーからこの作品が公開される。
本作の主人公は、サンタの兄のフレッド・クローズ。サンタ
(ニコラス)に兄弟がいて、それがいろいろ悪さをするとい
う話は過去にもいろいろあったようだが、今回の設定は、実
はその兄も本当は聖人になって良いくらいの善人だったが、
弟の度を超えた博愛主義の前に影が薄かったというものだ。
そしてその確執から、フレッドは両親とニコラスの住む北極
には足を踏み入れず、一人で都会暮らしをしていたが…。因
に、ニコラスがサンタ・クロースとして聖人に列せられたた
め、その家族の彼も不老不死の恩恵に預かっている。
一方、神様の世界も効率化が要求され、この年の北極にはお
もちゃ工場の実態を調査するとして調査員が来ていた。その
調査員は、問題点が3つ見つかったら工場は閉鎖すると告げ
て調査を開始する。
そんな北極に、いろいろな事情から初めてフレッドがやって
来ることになる。その再会を喜びたいニコラスだったが、フ
レッドの引き起こしたトラブルのお陰で、工場は瞬く間に問
題点2つを発生してしまう。そして…
このフレッド役と共同脚本を、2005年“Wedding Crashers”
が全米興行で2億ドル突破の大ヒットを記録したヴィンス・
ヴォーン。ニコラス役を『シンデレラマン』などのポール・
ジアマッティ。フレッドの行為に振り回されるニコラスの役
柄はぴったりだ。
また調査員役のケヴィン・スペイシー。兄弟の母親役でキャ
シー・ベイツ。フレッドの恋人役でレイチェル・ワイズと、
オスカー受賞者が3人も揃う。特にスペイシーの顛末は傑作
だった。
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11月20日(火)
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