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On the Production
by 井口健二
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■再会の街で、鳳凰、黒い家、エンジェル、ザ・シンプソンズ、その名にちなんで、SAW4
母国を離れてニューヨークに移り住んだインド人女性を中心
に、異国の地で環境や文化の違いに戸惑いながらも健気に暮
らして行くインド人一家の姿を描く。
特に、夫婦の間に生まれ正式名は別にあるが親にはゴーゴリ
と名付けられた息子が、自分の名の由来を含めて、自らのア
イデンティティーに目覚めて行く姿が描かれる。しかもこの
息子が、親族に反対されることは承知で白人女性を好きにな
ったりという、いろいろな出来事が女性監督らしい細やかな
演出で描かれて行く。
昔は人種の坩堝と言われた合衆国で、インド人の立場がどん
なものかは全く判らないが、映画ではインド人同士の横のつ
ながりの強さは明確に描かれていた。「付き合うだけならど
んな女性でもかまわないが、結婚はインドの同じ地方出身者
に限る」という台詞は、映画の中で何度も出てきたものだ。
ただし、主人公にとってそれはさほど重要な問題ではなく、
そんな民族的な話よりもっと普遍的な家族の問題が描かれて
いる。ナーイル監督は、『モンスーン…』でも家族の問題を
見事に描いていたが、その流れの先にある作品というところ
だろう。
因にゴーゴリは、ロシア作家に因んで名付けられているが、
大学で名告るたびに「『外套』の作家だね」と返される。し
かもその後に「天才だけれど人格的には破綻者だった」など
と続けられるもので、恐らく日本の大学では、名前も聞いた
ことのない学生がほとんどだと思われるが、西洋人の教養の
レヴェルの高さを改めて認識した。
なお、本作の製作者には小谷靖、木藤幸江という日本人の名
前が並んでいる。彼らの名前をデータベースで調べると『輪
廻』や『予言』といった題名が並んでいて、日本ではジャパ
ニーズホラーを手掛けていた人たちのようだが、見事な転身
という感じだ。
それから、ナーイル監督の名前はいろいろに表記されるが、
今回の表記はこのようになっていたものだ。ただし舞台挨拶
に立った木藤プロデューサーは、「ナイール」と呼んでいた
ようにも聞こえたが、聞き違いだろうか。
因に監督は、ジョニー・デップ主演による“Shantaram”の
撮影開始を年末に控えており、その準備のため今回の映画祭
への来日はなかった。今後来日があったら、名前を確認した
いものだ。

『SAW4』“Saw IV”
毎年この時期になると登場するホラーシリーズの第4弾。
シリーズの第1作は、ソリッドシチュエーション・スリラー
という新ジャンルを創設したとまで言われたものだが、実は
そこから続く2作はそのジャンルへの拘わりが、それはそれ
で面白いものではあったが、多少マンネリ化の様相も呈して
きていた。
それが本作では、勿論ジャンルの特性は保ったままで、新た
な展開に挑んでいる。
実は、第3作の公開時に行われた来日記者会見で、ダーレン
・リン・バウズマン監督は第4作以降の継続シリーズは他の
監督に任せたいと語っていたものだが、この脚本を見せられ
たらこれはやりたくなる、そんな感じの見事な展開を繰り広
げた作品だ。
物語は、ある死体の司法解剖から始まる。これがまず、過去
にここまで丁寧に解剖を描いた映画はないだろうと思わせる
位に見事なもので、そしてその遺体の中から物語の進行の定
番となっているある物が発見される。
一方、前作の事件を捜査していた刑事が2人行方不明となっ
ており、遺体から発見された物は、行方不明の刑事の生命を
賭けた殺人鬼ジグソウからの挑戦状だったという展開だ。そ
して今回の主人公となる刑事が、それに挑むことになるが…
まあ、それにしてもこの映画の製作者たちは、毎回々々よく
ぞここまで手の込んだ人間の殺し方を考えつくものだと思わ
せる。今回も、奇妙なからくりを五万と用意して楽しませて
くれる。そして今回は、それに加えて背景のドラマもしっか
りと描かれているものだ。
脚本は、「プロジェクト・グリーンライト」という新人登竜
門において、初めてホラー作品で受賞を果たしたパトリック
・メルトンとマーカス・ダンスタン。その直後から大量のオ

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10月31日(水)
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