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On the Production
by 井口健二
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■ヘアスプレー、ある愛の風景、サーフズ・アップ、チャプター27、風の外側、この道は母へとつづく、FLYBOYS
ただし、脚本上では多少疑問が生じた。例えば緊急の場面で
咄嗟に学習しただけの言語が出てくるものかどうか。また、
民族的なつながりを考えると、男の行う犯罪が有り得るもの
かどうか。
まあ、2つめに関しては南北問題なども絡むのかも知れない
が、それならそれなりの説明が欲しかったところだ。それに
主人公の2人に血縁が有るのか無いのか、母親の採った行動
についても、もう少し正確な情報が欲しかった。
出演者では、主演した安藤サクラは奥田の次女だそうで、な
かなか頑張っていた。一方のやくざ役はモデル出身の佐々木
崇雄。本業では韓国でも活躍中とのことで、本作には適材だ
ったようだ。
下関フィルムコミッションの協力で、町の各所の風景も心地
よく描かれていた。なお、主人公がオペラの個人レッスンを
受けるシーンは、藤原義江の生家で撮影されているものだ。
『この道は母へとつづく』“Italianetz”
2005年のベルリン映画祭の少年映画部門でグランプリを受賞
した作品。ロシア北部レニングラード州の孤児院を舞台にし
た少年ドラマ。
背景は現代。ロシアの孤児院には子供が溢れている。その一
方で、その子供たちを西側富裕層の子供に恵まれない夫婦に
斡旋することも、日常的に行われているようだ。だから孤児
院にいる子供たちにとって、斡旋されることが夢のようにも
なっている。
そんな中で主人公は、正に金持ちのイタリア人の夫婦の目に
留まり、そこに里子に出されることが決まった運の良い子供
だった。因に原題は、里子が決まってから付いた主人公の仇
名となっている。
ところが、先に里子に出された子供の実の母親が現れ、騒ぎ
を起こす事態が発生する。その母親はアル中で、子供は里子
に出されたことが幸運だったとも言える状況だったが、ある
事情もあって、主人公は実の母親に会いたいとの思いを募ら
せることになる。
そして、その思いを叶えるため、少年は孤児院では教えてい
ない文字を読むことを憶え、孤児院に保管されている自分が
保護されたときの書類を盗みだし、そこに書かれた手掛かり
を許に、母親を探す旅を決行する。
これに対して孤児院側は、斡旋で得たお金を取り戻されては
適わぬとばかり、警察力まで動員して少年の行方を追跡。し
かし少年は、孤児仲間や街の人たちなどの協力もあって、捜
索の網を掻い潜って行く。そして徐々に母親が元いた住所に
近づいて行くが…
主人公を演じるコーリャ・スピリドノフはプロ子役で、その
他にもロシアの若手の俳優がいろいろ出演しているようだ。
一方、撮影は実際の孤児院でも行われて、そこでは本物の孤
児の子供たちも多数出演しているものだ。
物語は、全国紙のコムソモーリスカヤ・プラウダ紙に載った
実話に基づいており、さらに実際の養子斡旋業者などにも取
材して脚本化されたそうだ。多少のフィクションは含まれる
が、ほとんどが現実に起こり得るものとされている。
最近、この種の少年を主人公にした作品を多く観ている感じ
がする。昔の大人なら、まず子供を守ることを最初に考えた
と思うが、最近の大人になり切れていない親たちは、子供を
守ろうとしない。特に政情が不安な世界では、どうしても子
供にそのしわ寄せが来るようだ。そんな現実が、この映画に
も描かれている。
『FLYBOYS』“Flyboys”
航空機が初めて実戦で使われたとされる第1次大戦の物語。
ドイツによるフランス侵攻が始まり、そこには飛行船や開発
されたばかりの飛行機も投入されていた。一方、この戦争に
合衆国は未だ参戦していなかったが、アメリカの若者の中に
は、義勇兵としてヨーロッパに渡る者もいた。
そしてその中にはフランス航空隊に入隊する者もいて、彼ら
は人類史上最初の戦闘機パイロットと呼ばれることになる。
しかしその現実は、極めて高い戦死率を記録に残す危険な任
務だった。
主人公は、アメリカで牧場経営に失敗し、3代に亘った牧場
を手放して戦地にやってくる。そこには、親に疎んじられた
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09月09日(日)
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