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On the Production
by 井口健二
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■サッド ヴァケイション、アフター・ウェディング、レター、ジャンゴ、北京の恋、カタコンベ、ナンバー23
からパリ訪問の誘いが掛かる。自分自身も変えたいと考えて
いた彼女はその誘いを受けてパリにやってくるが…
到着して早々、姉はその夜に開かれる秘密パーティにヴィク
トリアを誘い出す。それは本来なら許可がなくては立ち入り
禁止の地下墓地で、無許可で行うものだった。そしてヴィク
トリアは迷宮に迷い込んで行く。
パーティ会場内は英語が通じるという設定が、アメリカの観
客にはフレンドリーかなと思わせておいて、徐々にそれが転
換して行く展開は、なかなか巧みに作られていた。
脚本監督は、トム・コーカーとデイヴィッド・エリオット。
共に監督はこれが初作品のようだが、この内、エリオットは
ウィル・スミス主演予定の『プロ・スパイ』の映画版の脚本
なども手掛けている。
またコーカーは、元々が『X−MEN』や『バットマン』も
手掛けるイラストレーターで、コミックシリーズのクリエー
ターでもあるとのこと。映像的な構成などには、それなりに
ツボを得ている感じもした。
物語に特別な意味があるわけでもなく、謎解きやアクション
もあるものでもないが、追いつめられる恐怖を描く単目的で
は楽しめる。多分、観る人を選ぶ作品だし、一般の人には勧
めるつもりもないが、さすがに『SAW』のツイステッドと
いう感じのものだ。
ヴィクトリア役は、2001年公開のブライアン・ヘルゲランド
監督作品“A Knight's Tale”(ロック・ユー!)のヒロイ
ンでデビューしたシャニン・ソサモン、姉役をグラミー賞歌
手のP!NKことアリシア・ムーアが演じている。
また、メインテーマを元X-JapanのYOSHIKIが担当していて、
彼のプロジェクトVIOLET UKによる“Blue Butterfly”とい
う曲がエンディングに流れるのも話題になりそうだ。
『ナンバー23』“The Number 23”
マヤの暦では2012年12月23日に世界は終わるのだそうだ。そ
んな数字の23にまつわる神秘に取り付かれることを、23エニ
グマと呼ぶらしい。
本作は、そんな23エニグマを背景に、ふと手にした本の登場
人物の生い立ちが自分の人生に酷似し、しかも23エニグマに
取り付かれていることを知った瞬間から、主人公に襲いかか
る恐怖を描いた作品。
自分を描いているとしか思えない本で、しかもその主人公が
破滅的な結末に向かっているとしたら、これはかなり恐怖に
陥りそうだ。そんな恐怖をこの作品では、見事に捻りを利か
せた展開で納得のできる物語に仕上げている。
ウィリアム・S・バロウズも取り憑かれたという23エニグマ
については、多少知識はあったものだが、こんなに深い状況
になっているとは知らなかった。
心理学的にはアポフェニアと呼ばれる現象で、確か数学的に
もこの数字に帰着しやすいことは証明されていたようにも思
うが、『ビューティフル・マインド』と同じで、ちょっとし
たタイミングで取り憑かれると恐ろしいことになりそうだ。
そんな興味深い背景の物語だが、本作ではさらにそれに2重
3重の展開が物語を深くしている。脚本は、ファーンリー・
フィリップス。プロとして売り込んだのはこれが最初という
新人だが、早くも次の作品はブライアン・シンガー監督で予
定されているようだ。
主演は、ジム・キャリー、ヴァージニア・マドセン。それぞ
れ現実と本の登場人物の2役を演じるが、キャリーには最初
にもう一役あったようにも思える。
監督は、『オペラ座の怪人』のジョエル・シューマッカー。
初期には『フラットライナーズ』や『ロストボーイズ』など
ちょっとオカルト的な題材も手掛けているから、この手の心
理的恐怖はお得意という感じのものだ。
ただ、巻頭のタイトルバックで、「タイタニック号の沈没は
1912年4月15日」とか、「ヒトラーの自殺1945年4月」など
出てくるが、これが1+9+1+2+4+1+5=23などの解説がないと、
何やらさっぱり判らない。アメリカでは、これだけで判るほ
ど23エニグマが有名なのかも知れないが、日本では字幕だけ
でも何か工夫が欲しい感じがした。
08月31日(金)
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