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On the Production
by 井口健二
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■自虐の詩、ロケットマン、ローグ・アサシン、4分間のピアニスト、クワイエットルームにようこそ、さらばベルリン、幸せのレシピ、シッコ
1945年、ベルリン。クルーニー扮するジャーナリストが空港
に降り立つ。彼の来訪は、ポツダム会議の取材という名目だ
が、実は戦前のベルリンで恋人だったドイツ人女性を国外に
脱出させることが目的だった。
そんな彼の運転手を努めるのが、マクガイア扮する伍長。好
青年を装う彼は、実は軍用車で各地域がフリーパスなのを利
用して、闇物資で荒稼ぎをしていた。そして彼の愛人は、ジ
ャーナリストが探している女性(ブランシェット)だった。
彼女の元夫はナチ親衛隊、その関係で彼女の交通は極めて制
限されている。そんな中で彼女を脱出させることに腐心する
ジャーナリスト。しかし、そこにいろいろな事件が起こりは
じめ、やがてそれは大きな秘密へと辿り着く。
戦中、戦後の混乱期のいろいろな出来事が暴露される。そこ
にあるのは、V2ロケットの開発やユダヤ人収容所の問題な
ど、現代史を揺り動かした大きな出来事の陰の部分だ。物語
はもちろん架空のものだろうが、当時の次の敵はソ連と見据
えたアメリカの暗躍が暴かれる。
全体の雰囲気は、『カサブランカ』を思わせるように創られ
ている。しかしその内容は、ロマンティックと言う言葉から
は程遠く、もっと現実的に醜いものだ。特に最後の女性の言
葉には、改めて真実の恐さを知らされた感じがした。
なお、作品は完全なモノクロームで製作されていて、最初に
ちょっと縦長のWBのマークが出たときには思わずニヤリと
したものだ。ただし、モノクロ画面では打ち抜きの字幕が白
い背景で多少見辛くなっていて、その辺は公開までに修正し
てもらいたいと思った。
『幸せのレシピ』“No Reservations”
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アアロン・エッカート、ア
ビゲイル・ブレスリンの共演で描くニューヨーク人気レスト
ランの厨房物語。
主人公は、ニューヨークで人気のレストランの女性シェフ。
腕は超一流、部下との関係も良好で、仕事も順調だが、多少
短気で、料理に少しでも文句を付けられると、客も追い返す
剣幕になる。そして、それを心配した店主からは、カウンセ
リングを受けることを命じられている。
そんなある日、彼女の姉が交通事故で死亡、幼い娘が残され
る。その娘は姉との約束で彼女が引き取ることになるが、も
ともと人付き合いも下手な彼女には、母親を亡くした幼い少
女の気持ちなど理解できるはずもなく、懸命の努力もなかな
か報われない。
しかも、彼女の先行きの仕事ぶりを心配した店主は、彼女に
無断で男性の副シェフを雇ってしまう。その副シェフは、実
は彼女の料理に憧れて、その下で働けるならと志願してきた
のだが、その仕事の態度は彼女とは相容れないものだった。
こんな男女と、幼い少女の物語が展開する。
ブレスリンは、昨年の東京国際映画祭に出品された『リトル
・ミス・サンシャイン』で主演女優賞を獲得したが、幼さが
目立つ中での受賞にはいささか疑問を感じたものだった。し
かし今回の作品を見ると、確かに彼女の演技力には脱帽せざ
るを得ない。
本作の撮影中に10歳になったということで、受賞作の当時の
幼さからは一歩脱却して少女らしさも出てきたところという
感じでもあるが、とにかく母親を亡くした直後の様子から、
自分だけ幸せになってしまう事への後ろめたさを表わす後半
まで、演技力と芝居に対する理解力には感心させられた。
共演は、店主役のパトリシア・クラークスンと、セラピスト
役のボブ・バラバン。監督は『アトランティスのこころ』の
スコット・ヒックス。この作品でも子役をうまく使いこなし
ていたことを思い出した。
なお、料理は、ウズラ、スズキ、フォアグラ、ホタテなど、
まともな料理がおいしそうに登場する。
『シッコ』“SiCKO”
『ボウリング・フォー・コロンバイン』のマイクル・モーア
監督が、アメリカの医療保険の問題を取り上げた新作。
WHOのランキングで、アメリカの医療システムの順位は世
界の37位。先進国の中では最も低いのだそうだ。その理由
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08月20日(月)
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