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On the Production
by 井口健二
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■呉清源、リトル・レッド、ヴィーナス、バイオハザード3(特別映像)、大統領暗殺、ストレンヂア
舞台は戦国時代の日本。最初に登場するのは犬を連れて山道
を走る少年。背後で炎上する寺を逃れてきたものらしいが、
一緒にいた僧侶は、少年にある寺を訪ねることを指示して戻
って行ってしまう。
一方、とある山間の小国に異国の装束の一団が現れる。彼ら
は雑兵の群れなら一人で全滅させられるほどの戦士の集団。
彼らはその国の領主と密約して、怪しげな砦の建設を進める
と共に、鍵を握る少年の行方を追っていた。
そして犬と共に旅を続ける少年に追手が迫ったとき、少年は
名無しと名告る剣士と巡り会い、その助けによって指示され
た寺を目指すことになるが、名無しは剣の鍔を鞘に結んで容
易に抜けないようにしていた。
明国から来た戦士たちが、鎖鎌やら長刀やらと、通常の刀剣
以外の武器を駆使して戦うのが結構見せ場になっているし、
その中心になる金髪碧眼の戦士というのも面白い存在になっ
ている。
他にも、小国の武士の中にもそれなりのキャラクターが立っ
ているし、異国の集団と密約を結んでいるという設定もかな
り捻りが利いている感じだ。さらに主人公の出自に係る話も
良いアイデアに思えた。
ということで、作品全体は結構面白い作品になっていた。
声優は、名無しをTOKIOの長瀬智也、少年を同じくジャ
ニーズ系の知念侑季が演じているが、それほど違和感もなく
普通に楽しめた。
なお、主人公ではないが登場人物のせりふで、「自分の身の
丈に合った目標を定めるか、より高い目標を定めてそれに自
分の身の丈を合わせて行くか」というような言葉があって、
ちょっと気に入った。

『Tokyo Real』
集英社から出版もされているケータイ小説の映画化。高校生
の少女がクラブの駐車場で輪姦に遭い、その後巡り会った男
と恋に落ちるが、本人はドラッグに手を出して身を滅ぼして
行く。
Jリーグの観戦に行くと、場内にドラッグ撲滅キャンペーン
のアナウンスメントが流れさる。このアナウンスメントも、
以前はスポーツをしたいなら手を出しちゃいけないというよ
うな曖昧なものだったが、今年はより具体的に個々の危険性
を訴えるものになった。
本作の巻頭には、この作品はドラッグの危険性を訴えるもの
であるというテロップが表示される。作り手はそういう意図
なのかも知れない。しかし出来上がった作品は、到底そのよ
うな意図が描かれているとは思えない代物だった。
まずこの映画にはドラッグの危険性が全く描かれていない。
むしろ描かれるのは、ドラッグによる快楽の増長で、まるで
ドラッグの良さを強調しているようなものだ。
それに、物語で罰を受けるのが主人公だけという結末は、こ
の作品の主人公のような馬鹿さえやらなければ良いというこ
とにも繋がる訳で、Jリーグのアナウンスメントで流される
「私だけは大丈夫」という論調そのものだ。
このようなことは、おそらくは脚本を読めば判るはずのもの
で、その程度のことも考えられないで、何がドラッグの危険
性を訴えると言えるのかと思ってしまう。
ドラッグの危険性を訴えるなら、例えば『エディット・ピア
フ』のような作品は一つの方法だろう。自分の容姿に関わる
となれば、特に女性には強烈なはずだ。この作品でも主演女
優にその程度のことはさせられなかったものか。
あるいは、完全に発狂してしまうような結末もあり得るかも
知れない。少なくともこの作品の結末のような甘っちょろい
ものでは、誰もその危険性には気が付くものではない。
特にこの作品では、ドラッグ反対だったはずの恋人が、突然
掌を返すようにドラッグは自由と唱え始める辺りの、結末直
前の展開に唖然とした。もちろんこれはその後の伏線になっ
ているのだが、この映画でそこまでの先読みを強いることに
は無理を感じる。
何かを訴えようとする作品であるなら、このような回りくど
い表現は、誤解を招くだけのものだ。訴えはもっとストレー
トに真摯にやらなくてはいけない。この辺にもこの映画の制
作意図に真剣さが感じられなくなったものだ。

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08月10日(金)
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