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On the Production
by 井口健二
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■デス・プルーフ、プラネット・テラー、マザー・テレサ、ファイアー・ドッグ、純愛、ナルコ、たとえ世界が終わっても
金ではすでにスリランカに3校の幼稚園と6本の井戸、さら
に中国に小学校を建設したとのことで、その支援の輪の広が
りが期待されている。

『ナルコ』“Narco”
どこででも突然眠ってしまう病気ナルコレプシーを題材にし
たフランス映画。
この手の病気の映画では、最近は短期記憶障害が良く登場す
るが、ナルコレプシーも一時期話題になって、その頃には何
本かドラマも作られていた記憶がある。この種の題材も流行
り廃りがある訳で、そんな昔の題材が久しぶりに再登場した
ものだ。
でもそういう再登場では何かしら新しい捻りが欲しくなる。
そこで本作では、眠っている間に主人公は突飛な夢を観てお
り、画才の有った彼はその夢をコミックスに描いて出版社に
売り込もうとするが…ということになる。
脚本監督は、過去にはカンヌ国際映画祭で受賞した短編作品
やCM、クリップなどでも実績の有るトリスタン・オリエと
ジル・ルルーシュのコンビが手掛けたもので、彼らの長編デ
ビュー作となっている。
そのデビュー作に、主演は『美しき運命の傷痕』などのギョ
ーム・カネ、共演には『ヴォドック』のザブー・ブライトマ
ン、『ル・プレ』のブノワ・ポールヴールド。さらにカメオ
でジャン=クロード・ヴァンダムまで登場するのだから、相
当の期待度と言えそうだ。
物語の展開では、彼の才能を盗んで一儲けを企む連中が出て
きたり、監督のコンビが演じる双子の殺し屋など、ちょっと
ベタな部分もあるが、これが最近のポップな感覚と捉えてい
いものかどうかは微妙なところだ。
プレス資料に掲載された映画評には、「70年代の感覚」とい
う言葉も見られるが、それが最近の若者にはポップという感
覚になるのかな…。正直、僕には『ファントマ』が思い出さ
れたもので、もう少しスマートな感覚で描いても良かったと
も思えたところだ。
巻頭には激しい戦闘シーンが登場して、これがCGIも使用
したかなり見応えのある代物だった。その他にも『スター・
ウォーズ』を思い出させる宇宙戦闘シーンなど、何度か登場
する夢のシーンはそれなりに力が入っているようだった。
実際、2004年製作でこの技術力は大したものだと思えるが、
ただこれが基本的に戦闘シーンや銃撃戦ばかりというのは、
多少食傷気味にもなったところで、ここに何か他のテーマも
あったらとも思えた。
でも、まあ監督コンビの才能はこれだけ見ても充分に感じら
れたもので、今ならもっと別のことができるとも思えるし、
その後の新作の情報などを聞いてみたいところだ。

『たとえ世界が終わっても』
最近も時々ニュースになるウェブサイトによる集団自殺を発
端にした作品。
自殺を題材にした作品は、数年前に『樹の海』など何本か在
って、作品の出来はともかくその風潮が気になったものだ。
本作も、その点では最初はあまり好ましい感じでは見られな
かった。しかし、まあ映画というのはそれなりに社会的責任
も在るということだ。
主人公は独身女性。持病が在るらしく、それを理由に集団自
殺への参加を試みる。ところが田舎の駅に集まった連中は、
テレビの最終回を観たいだの、最後に食事をしたいだのと言
い出して、なかなか実行しようとはしない。
それでもどうにか自殺決行の場所にはたどり着き、睡眠薬で
眠ったまま死ねるはずだったのだが…目が覚めると、彼女は
勤務先のデスクに突っ伏していた。しかもそこに管理人の男
が現れ、確実に死ねる薬を渡す代りに、1人の男性を救って
くれと取り引きを申し出る。
その男性は肺ガンで2度目の手術に可能性は残っているが、
その手術代が用意できない。そこで彼女が婚姻届を出し、生
命保険の受取人を彼にして死ねば、その手術代が出来るとい
うのだ。最初はそんな話は取り合わなかった彼女だったが…
この管理人を大森南朋、女性を伊加日合作映画『SILK』
のヒロインに大抜擢された新人の芦屋星、男性を舞台俳優の
安田顕が演じて、特に大森の掴み所のない演技は作品に填っ
ている感じがした。

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07月31日(火)
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