ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460319hit]
■ミリキタニの猫、プロヴァンスの贈りもの、ブラッド、白い馬の季節、ミルコのひかり、阿波DANCE
最初に一言で言うと、予想外に良い感じの作品だった。
観るまでは今どき阿波踊りなんてというか、阿波踊りそのも
のが妙に全国各地で行われていて、それに当て込んだのも見
え見えという感じもしていたのだが、映画自体は青春ものと
しても、またダンスムーヴィとしてもそれなりに上手く作ら
れていた。
主人公は東京の女子高生。Hip-Hopのダンス大会で優勝し、
仲間はニューヨークのクラブに招待されるが、何故か彼女だ
けは離婚した母親の都合で実家の阿波徳島に引っ越してきて
しまう。そして地元の高校に通い始めるが、そこでダンスと
言えば阿波踊り。
そうとは知らずダンス部を訪れた彼女は、阿波踊りに情熱を
燃やす男子生徒たちを見て、「ここは自分のいる場所ではな
い」と思い知らされる。そんな気持ちをぶつけるように、彼
女は1人でHip-Hopダンスを踊っていたが…
これが最終的に阿波踊りの大会に参加するまでの心境の変化
というか、彼女の成長が描かれる訳だが、Hip-Hopダンスが
阿波踊りになるまでの過程は並大抵ではない。「相容れない
ものを一緒に描くのが物語で、そのハードルは高いほど面白
い」と言っていた監督もいたが、これも正にそんな展開だ。
しかもその間には、ダンスバトルがあったり、大会に出場す
るための事前の審査会があったりと、展開も山あり谷あり、
それを煩すぎもせず白けることもなくという感じで、脚本も
演出も丁寧に行われている感じだった。
その脚本と監督は、昨年12月に『エンマ』という作品を紹介
した大野敏哉と長江俊和。大野はさらに『シムソンズ』も手
掛けているものだ。『エンマ』も苦言は呈しているが評価は
したつもりなので、そういう人たちが良い仕事をしてくれる
と嬉しくなる。
それに作品の見所は、何と言ってもクライマックスの阿波踊
りとHip-Hopダンスの融合。かなりトリッキーな感じだが、
これをKABAチャンの振付けが見事に実現している。最近
のブラウン管(死語だ)を賑わすこの手のタレントは、正直
あまり好きではないが、さすが本業は伊達ではないようで、
このダンスシーンは見事なものだった。
主演は榮倉奈々と勝地涼。共演は北条隆博、橋本淳、尾上寛
之。他に、岡田義徳、星野亜希、松福亭松之助、高樹沙耶、
高橋克実。
もちろん作り物のお話だが、物語の展開にはそれほど破綻は
見られなかったし、特に主人公たち5人のダンスシーンは、
花丸を付けてやりたくなるぐらいの頑張が感じられて良かっ
た。
07月10日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る