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On the Production
by 井口健二
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■ショートバス、選挙、ジーニアス・パーティ、監督・ばんざい!、イラク−狼の谷−、怪談、ベクシル−2077日本鎖国−
演している。
『怪談』
三遊亭圓朝の名作「真景累ヶ淵」を、『リング』の中田秀夫
監督、『しゃべれども しゃべれども』の奥寺佐渡子脚本で
映画化した作品。
物語は、深見新左衞門の皆川宗悦殺しに始まり、富本の女師
匠・豊志賀と煙草売り新吉の恋物語へと続く。しかしそれは
親の代から続く因縁の果てに生じたものであり、やがてそれ
が怨念を生み、お久、お累、お園、お賤へと続く悲劇の連鎖
を描いて行く。
オリジナルは、口演すると8時間に及ぶとされる大作だが、
映画はその全編を2時間に見事にダイジェストしたものだ。
しかも豊志賀の心変わりなどは、映画化では初めて原作に忠
実に描かれていると言うことで、これが見事に現代にマッチ
するものになっている。
残念ながら僕は、「真景累ヶ淵」を通しで聞いたことはない
のだが、この映画に描かれた舞台や風景は一つ一つ納得でき
るものだったし、それはある意味リアルではない部分もある
のだが、それらが見事に作品として統一されたものになって
いた。
それに、最初に一柳斎貞水による講釈を据えることで、虚構
の物語への導入もスムースになっており、そこからはゆっく
り映画の世界に浸れる感じがした。
主演は、新吉役を歌舞伎の尾上菊之助、豊志賀を黒木瞳、お
久を井上真央、お累を麻生久美子、お園を木村多江、お賤を
瀬戸朝香。他に、津川雅彦、榎木孝明、三石研らが共演。特
に、尾上と黒木の堂々とした演技は、日本映画として恥ずか
しくないものだ。
また、撮影:林淳一郎、照明:中村裕樹、美術監督:種田陽
平、衣装デザイン:黒澤和子というスタッフも、完成された
舞台を思わせる重厚な雰囲気を描き出して、映画の完成度を
高いものにしている。
それにしても、物語は宗悦の怨念が許になる訳だが、その怨
みを晴らすために実の娘まで利用してしまうというのも酷い
話だ。しかも相手は、直接自分を殺した本人ではないのだか
ら、こんな理不尽な話もない。
そんな無茶苦茶な話を、この映画では、豊志賀の恋という一
点に集約させて、見事に理に叶ったものにしている。これは
原作の通りの物語だというのだが、その物語をこのように理
路整然と集約させてみせた脚色も見事だし、それを映像化し
た演出も素晴らしかった。
観る前までは、何で今さらこんな古典をという疑問も感じて
いたものだが、映画は確かに今の時代に再話されていいと思
える作品だった。
『ベクシル−2077日本鎖国−』
2002年『ピンポン』の曽利文彦監督によるCGIアニメーシ
ョン作品。元々曽利監督は、テレビや映画のVFXスーパー
ヴァイザーも努めるCGIアーチストということなので、作
品の成立自体には問題はなったようだ。
物語の背景は、日本が西暦2067年にハイテクを駆使した完璧
な鎖国に入ってから10年後の世界。日本は情報通信の出入り
は勿論、衛星からの光学的な監視も攪乱して、その国内の状
況はまったく不明となっている。
鎖国の原因は、ロボットとバイオ技術に関して原子力と同様
の国際監視が行われることに反対したため。詳しくは、精密
なアンドロイドとバイオ技術を応用した人間の延命技術を日
本が独占しようとし、それを規制しようとする国際社会から
孤立したということだ。
しかし日本からの軍事用を含むロボットの輸出は継続して行
われており、その貨物に隠れて、「近いうちに大変なことが
起こる」という情報がもたらされる。しかもその情報を運ん
だのは、若者そっくりなのに生体反応の検出されないアンド
ロイドだった。
この情報に、ハイテクを駆使する米国の特殊部隊Swordは、
「日本に関わるな」という大統領命令を無視して精鋭部隊を
日本に潜入させることにする。その目的は、内部から特定電
波を発信することで攪乱パターンを解析し、光学監視を復活
させるものだったが…
こうして、Sword隊員のベクシルとレオンは日本に向かうこ
とになる。そこには、鎖国によって強制退去させられるまで
のレオンの恋人マリアもいるはずだった。
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05月10日(木)
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