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On the Production
by 井口健二
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■デブノーの森、エマニュエルの贈りもの、コマンダンテ、電脳コイル、初雪の恋、テレビばかり見てると馬鹿になる、スパイダーマン3
て以来引き籠りになっているという女性。部屋の中はゴミの
だらけで、そこに置かれたテレビは点けっぱなしで、主人公
はそれを見ては眠り、起きては見るという生活を5年間続け
ている。
そこに出入りしているのは、彼女の生活振りをネット中継す
るためその設備の点検に来る男と、彼女の身体で性欲を満た
しに来る男。その2人はそれぞれ現金や食料を置いていき、
また実家からも届く食料で彼女は生きている。
ところがそこに、母親から頼まれたというカウンセラーの男
が現れる。そして偶然3人の男が1つの部屋にいることにな
るが…
この主人公を、AV出身の穂花という女優が演じて、大胆な
演技を体当りで見せてくれる。
しかも、上映時間85分の大半が、据えっぱなしのヴィデオカ
メラでたぶん3日間に渡って連続撮影したものを、途中早送
りにしただけで編集したもので、その間ほぼ出突っ張りで演
技を続けたこの女優には敬意を表したいくらいのものだ。
内容的には、原作に描かれたものを忠実に映像化しているの
かもしれないが、現代の一側面を鋭く切り取っているように
も思えるし、見て考えるところは充分にある作品だった。
出演は、穂花の他には、『長州ファイブ』などの三浦アキフ
ミ、舞台で活躍している大橋てつじ、そして、『雪に願うこ
と』などのバイプレーヤー田村泰二郎。
それにしても、穂花とカウンセラー役の田村との対決のシー
ンは、映画が始まってからかなり経っての部分で、というこ
とは撮影が始まってからの経過時間も相当掛かっているはず
のものだが、ここでの台詞などもスムースに話されているの
には感心した。
映画の長廻しもいろいろ見てきたが、その中でもこれはヴィ
デオでしか出来ない極端なもので、こういうことに着眼した
企画者にも感心したところだ。
『スパイダーマン3』“Spider-Man 3”
5月1日に世界最速で日本公開される作品の、4月16日夕刻
に行われるワールドプレミアに先駆け、同日午前10時30分か
らマスコミ向けの世界最初の試写会が行われた。こんなこと
は滅多にないので、その最初の試写会に駆けつけた。
シリーズの前2作は、いずれも世界的なヒットを記録した。
特にその出足の良さでは、全米興行での1億ドル突破までの
最短記録など、揺るぎない記録を打ち立てている。そんなシ
リーズの最終話とされる作品に観客が持つ期待というのは、
一体何だろう。
単純に、ヒットの要因となったスピード感や爽快感を高めた
だけの作品だっただろうか。しかしそんな2番煎じ、3番煎
じの作品を見せられてそれだけで喜んでしまっていいのだろ
うか。試写会で上映されたのは、そんな観客の思いに見事に
応えてくれる作品だった。
物語は、今回の敵役サンドマンとベノム、それにゴブリンの
再来も事前に予告されていたし、それらとスパイダーマンの
壮絶な闘いが繰り広げられることは当然判り切っていたこと
だ。その中で、新たな展開は何があるのだろう。
思えば、シリーズの第1作の公開時には、ポストプロダクシ
ョン中に起きた同時多発テロによって、ワールドトレードセ
ンターの描かれた予告編が変更されるなど、世界は激動のさ
中だった。
そして復讐を旗印にした米軍によるイラク侵攻。その中で第
2作が作られ、今もなおそのイラク侵攻が泥沼化する中で、
第3作が作られたものだ。
その第3作で、監督サム・ライミが描き出したのは、大ヒッ
トシリーズの最終話とされる本作だからこそ敢えて成しえた
作品、見終えたときの率直な気持ちはそういうものだった。
もちろんこの映画には、敵との壮絶な闘いもあるし、それを
スピード感を倍増して描き出した見事なVFXもある。しか
し、観客にはそれらの目眩ましを通しても歴然とした監督の
メッセージが伝わってくる。
最近、特にハリウッド映画の作家性について討論する機会が
あったが、娯楽映画の際たるものであるこのヒットシリーズ
で、それでもこれだけの作家性を発揮できる監督、またそれ
を認めて映画化を推し進めた映画会社。彼らに拍手を贈りた
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04月20日(金)
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