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On the Production
by 井口健二
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■ドリーム・クルーズ、ABonG、不完全なふたり、プレステージ、ストリングス、ハリウッドランド、Academy
American Way”の題名で紹介した作品が改題されて公開され
る。なお改題は邦題だけでなく、上映されたフィルム上でも
これになっていたものだ。
1959年6月16日、『スーパーマン』のテレビシリーズに主演
したジョージ・リーヴスの死に纏わる謎を追った作品。
僕は、リーヴスが死んだときの報道に関しては、多少憶えて
いる程度だ。テレビシリーズは見ていたし、その内容もかな
り正確に記憶しているが、死の報道自体は冷静に受けとめた
と思うし、この映画の中の子供たちのようなショックを受け
た記憶はない。
それは多分、日本での放送が、他の西部劇や探偵ものと同じ
ように吹き替えで、子供なりに物語がフィクションであるこ
とを理解していたのかも知れない。それがアメリカでは、こ
の映画の通りとすれば、僕の想像をはるかに越える社会問題
だったようだ。
しかもその死は、当初から自殺という結論で、日本での以後
の報道はほとんどなかったと思う。だがその死にはいくつも
の謎が残されていた。その謎を、リーヴスの母親に依頼され
た私立探偵が調査するという形式で紐解いて行く。
そこには、リーヴスが当時のMGM社長夫人の愛人だったと
するスキャンダラスな展開も登場する。そして、偉大なヒー
ローを演じたがために、その陰から逃れられなくなった男の
悲劇が描き出される。しかも、それをMGMなどの実名を出
しながら描くものだ。
ただし、番組終了後に『ここより永遠に』に出演したものの
上映版からはカットされたという下りでは、これはフレッド
・ジネマン監督が、「スーパーマンだったせいではない」と
明確に否定しているにも関わらず、その説明になっていたり
もする。
その辺が、フィクションである探偵の登場と共に、かなり微
妙なところだ。また、事件に対する様々な再現も登場し、そ
の判断は観客に委ねられるが、今まで字面の情報としてのみ
知っていたことが映像として提示されると、それもまた興味
深いものがあった。
出演は、リーヴス役にベン・アフレック、MGM社長夫人役
にダイアン・レイン、社長役にボブ・ホスキンス、そして探
偵役にエイドリアン・ブロディ。因に、アフレックはこの役
でヴェネチア映画祭の主演男優賞を受賞している。
それにしても、レインが「10歳も年上なのよ」と言いながら
アフレックを誘惑する下りには、確かに本人たちの年回りも
その通りなのだが、彼女を子役の頃から見ている自分にはち
ょっとショックだった。
『Academy』
オーストラリア人の新人監督による日本=オーストラリア合
作映画ということだが、実際は日本人のプロデューサーの企
画による作品。製作費も日本側が拠出したようで、キネマ旬
報のリストでは日本映画の扱いになっている。
メルボルンに実在する「ヴィクトリア・カレッジ・オブ・ア
ーツ(VCA)」という芸術学校をモティーフに、入学も難
しいし、しかも1年間で成果が現れないと強制退学という厳
しい条件のもとで切磋琢磨する若者たちを描く。
物語は、日本からやってきた男女の留学生を中心に、そこに
才能豊かなバレリーナや、母親の期待を背負うヴァイオリニ
スト、映画監督を目指す男子学生などが絡むという展開。
ただし、役柄がどれもステレオタイプの域を出ていない。
しかもそこにホモだのレズだという問題を持ち込むことは、
今の時代では何の新鮮味もないし、「ああ、またか」という
お話になってしまった。監督が新人ということであえて苦言
を呈することにするが、何となく学校の卒業製作を見せられ
た感じだった。
結局のところ監督(脚本も )は、プロデューサーの企画に乗
せられた訳だから、そこに無理矢理お話を作ることの難しさ
は理解するが、それにしても、特に後半の復讐戦に出る辺り
からは、もう少し捻った展開を見せて欲しかった。
とは言うものの、学校はモティーフにしただけとは言いなが
ら、その学校の評価を落としかねないような内容の物語を、
その学校の協力で撮影するというのも大胆な話で、学校側の
度量には感心した。
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03月31日(土)
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