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On the Production
by 井口健二
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■酒井家のしあわせ、めぐみ、沈黙の傭兵、恋人たちの失われた革命、パプリカ、ファミリー、華麗なる恋の舞台で
そんな彼女が自宅に戻ったとき、歓迎してくれたのは、収監
中は日本へ語学勉強に行っていると聞かされてきた幼い弟だ
けで、父親は早く家を出て行ってくれと言い放つ。彼女もま
た、今は亡き母親の苦難を言い出し、父親との仲の悪さが描
かれる。
ここで彼女が改心していればまだ救いようもあるのだが、彼
女はその足で昔蔓んでいたやくざの許を訪れるといった有り
様だ。しかも、そこでも彼女は、収監前に事務所の金が紛失
したことを疑われて、ボスに殴り飛ばされる。
そんなどうしようもない娘でも、父親にとっては我が子であ
り、最後には許さざるを得ない。そしてその父親が白血病で
余命いくばくもないことが判ったとき、彼女は初めて父親の
愛の大きさに気付かされる。
父親が彼女のために出世を棒に振った元刑事であったり、弟
が本当に弟であるのかどうかなど、いろいろなサブプロット
も絡めて、かなり激烈な物語が展開する。
まあ、いくらなんでも話を作り過ぎているという感じもする
が、これが映画というものだろうし、仮にこういうシチュエ
ーションがあったら、こうなってしまうだろうなあという程
度には、話も出来ているものだ。その分、結末は見えてしま
うものだが…
主演は、韓国テレビで「涙の女王」と称されるスエ、映画は
初主演。父親役は、『友へ チング』でも主人公の父親を演
じていたチュ・ヒョン。そして「弟」役を、『奇跡の夏』の
パク・チピンが出演しているが、実は本作の方が先に撮られ
たもので、これがデビュー作だったということだ。
韓国では2004年に公開、『ブラザーフッド』『オールド・ボ
ーイ』などの男性映画を相手に回して、女性主演の作品では
最高の200万人の観客動員を記録したとされている。なお、
韓国映画で家族を描いた作品では、父子または母子の片親で
あることが圧倒的に多いそうだ。理由は不明のようだが。

『華麗なる恋の舞台で』“Being Julia”
サマセット・モームが1937年に発表した『劇場』を、『戦場
のピアニスト』でアカデミー賞脚本賞受賞のロナウド・ハー
ウッドが脚色。ハンガリー出身で『太陽の雫』などのイシュ
トヴァン・サボーが監督した作品。
1930年代のロンドン・ウェストエンドを舞台に、人気絶頂だ
が美貌が気になり始めているスター女優と、彼女を取り巻く
人々を描く。
彼女の名前はジュリア。スター女優らしく奔放な生活を続け
るジュリアだが、興行主で舞台監督の夫は、暖かくそれを見
守っている。そして、彼女はパトロンとも優雅なときを過ご
すなど、満ち足りた人生だが、そろそろ美貌の衰えが気にな
っている。
そんなある日、夫の許に興行経営術を学びにアメリカ人の青
年が現れる。彼女の大ファンだという青年は、彼女を自宅で
のお茶に誘い、情熱的に彼女に迫ってくる。そしてベッドを
共にしたジュリアは、舞台での演技にも一層輝きを増すこと
になるが…
程なく青年には若い女優の愛人が登場し、その愛人をジュリ
アが次に予定している舞台の共演者にと推薦してくる。しか
も、野心家の愛人はジュリアの夫にも手を伸ばしているよう
で、夫の演出は彼女にばかりスポットライトを当てているよ
うにも見える。
そんな状況にジュリアは為す術もなく従ってしまうのだが…
このジュリア役をアネット・ベニングが演じて、昨年のアカ
デミー賞で主演女優賞候補にもなった作品だ。そして彼女の
周囲を、ジェレミー・アイアンズ、マイクル・ガンボン、ミ
リアム・マーゴリーズ、ジュリエット・スティーヴンスンら
イギリス演技陣が固める。
つまり、ロンドンの演劇界が舞台の作品にアメリカ人の女優
が主演している訳だが、なるほどこの華やかさはハリウッド
スターという感じのもので、周囲の堅実な演技の仲で一層華
やいで見える仕組みのものだ。
物語は、モーム原作らしくユーモアと皮肉に満ちたもので、
この原作からハーウッドは、最後に思わず喝采してしまうほ
どの痛快なものに仕上げている。見終って直ぐもう一度見た
くなるような作品だった。

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11月10日(金)
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