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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2006コンペティションその1
られ、バイクや自転車に乗った若者たちの集団から逃げ惑う
シーンが描かれる。それはかなり見応えのアクションで、そ
んな軽い乗りの作品かと思わせたのだが、実際の作品はその
ような軽い作品では全くなかった。
実際にチェチェンやアフガニスタンなどでどれほどのロシア
の若者たちが命を落としたかは知らないが、この映画に描か
れたように、それによって老人ばかりが残され、活気を失っ
た村が多数存在することは想像できるところだ。
しかし、映画の巻頭に描かれているような若者では、そんな
事実さえ気にせずに暮らしているのが現実とのことで、この
作品はそんな現実を描くことを目的とした作品のようだ。
僕自身を含めて、戦争を知らない日本人には想像もできない
現実がここには存在している。

『2:37』
映画の巻頭で、1人の学生が自殺を図って自らを傷つけたこ
とが示唆される。その時刻が午後2時37分。そして物語は、
その朝からの5人の男女学生の行動を追い始める。
作品では、インタヴューと実写のシーンが交互に展開される
が、最初は冷静なインタヴューの発言が徐々に危うい物語を
紡ぎ始め、それに呼応するように実写のシーンでも最初写さ
れていたシーンの裏に潜む厳しい現実を描き出して行く。
映画は、自殺したのが誰かという謎解きの興味で観客を引っ
張って行くが、実は描き出されるのは、そんな謎解きのよう
な甘いものではなく、10代最後の時を迎えている若者たちが
直面する厳しい現実の姿だ。
そこには身体障害という自分自身が直面することの無いもの
もあるが、多くは将来や家族の問題、また妊娠やゲイなど、
現代社会においてはいつでも起こりうる現実的なものだ。
だからこそこの作品は、カンヌ映画祭で20分間ものスタンデ
ィングオベーションで称えられたのだが…ただし、映画を表
面的に見てしまうと、特に謎解きに絡めた辺りがどうしても
納得できない部分になってしまうものでもある。
でも実は、この作品の狙いは、こんな現実に晒されても生き
て行かなければならない残された若者たちを描くことであっ
て、自殺してしまうことが何の解決にもならないことを主張
しているものだ。
なお作品は、監督が19歳の時に書き上げた脚本を2年掛けて
完成させたということだが、物語だけでなく、各シークェン
スの時間軸を重複させて描く演出なども見事な作品だった。

『松が根乱射事件』
1990年代前半の物語。主人公は小さな村の平和を守る巡査。
ところがある日、村でひき逃げ事件が発生し、死んだと思わ
れていた被害者の女が息を吹き返す。そしてその女は退院す
ると、怪しげな男と共に、主人公の祖父が所有する空き家に
住み始める。
それは、主人公の双子の兄が許したらしいのだが、その後、
カップルはいろいろ怪しげな行動をし始める。このカップル
の行動を中心に、主人公の一家が遭遇するいろいろなエピソ
ードが綴られて行く。
脚本監督は、『リンダ・リンダ・リンダ』の山下敦弘。監督
自身がいろいろな見方ができる作品と称しているが、正直に
言って焦点が定まり切っていない作品で、観客として何を見
ていいのか判らない。
刹那的な面白さを見ればいいのかも知れないが、それにして
はあまり面白さを感じられなかったし、ブラックな笑いとい
うには、タブーや道徳感に挑戦するものでもなく、ちょっと
ブラックさが足りないような感じがする。
それに乱射事件という題名には、どうしても『ボウリング・
フォー・コロンバイン』のようなものを思い浮かべてしまう
訳で、それに対してこの映像は余りに弱すぎる。監督は多分
その辺も笑いの対象と考えているのだろうが、これでは笑わ
れるのは監督本人になってしまうものだ。
いずれにしても全体的に散漫な印象で、これはという見所を
見つけることができない作品だった。監督の前作は好きだっ
ただけにちょっと残念な感じがした。

『フォーギブネス』
1948年4月9日に約1000人の住民が虐殺されたというパレス

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11月05日(日)
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