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On the Production
by 井口健二
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■奇跡の朝、ルイーズに訪れた恋は…、海と夕陽と…、バックダンサーズ、46億年の恋、サンクチュアリ、エリー・パーカー、16ブロック
瀬々作品に限らず、最近、何本かピンク映画の試写は観てい
るが、ただ女性の裸さえ出ていればいいものから、それなり
の意識を持ったものまで、この系統の作品もいろいろあるよ
うだ。そんな中で、この作品は作劇にもいろいろ工夫が凝ら
されている。
物語は、現代に始まって現代で終わるが、その間にいくつか
の出来事が時間軸を遡って描かれる。その構成自体は、さほ
ど目新しいものではないが、本作ではそれがかなり丁寧に構
成されている感じがした。
最初に提示されたいくつかのキーワードが、時間軸を遡って
いくことで徐々に真相が明らかになって行く。この構成は、
SFの時間ものと同じで、その間にパラドックスが生じると
おかしなことになる。しかし、その点でこの作品はよく神経
が行き届いている感じがした。
もちろん、事件の真相自体は最初に割れているが、それでも
なおその裏に存在する別の真相が描かれて行く。それは、現
代社会の一種の病巣のような部分でもあるかも知れないし、
今、それを意識して描けるのは、もしかするとピンク系の人
たちだけかも知れないとも思った。
その意味では、普段見慣れている一般映画とは異なるし、こ
んな作品が海外に出て行けば、それなりに観客を驚かせるこ
ともできるのではないかと思ってしまうところだ。

『ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー』
                   “Ellie Parker”
オスカー候補にもなり、大作『キング・コング』のヒロイン
にも上り詰めたナオミ・ワッツ。彼女が最初に注目されたの
は2001年公開の『マルホランド・ドライブ』だが、その同じ
2001年1月のサンダンス映画祭に出品された短編映画がこの
作品の原形になっている。
製作、脚本、監督、撮影(出演も)は、『タンク・ガール』
と『マルホランド…』でワッツと共演しているスコット・コ
フィ。2人はその後も作品を発展させてさらに4本の短編を
製作、それらを繋ぎ合わせて2005年に完成させたのが本作と
いうことだ。
物語は、ハリウッドに暮らす若い女優の卵が、毎日のように
オーディションに挑戦し、挫折を繰り返しながらも、夢を抱
いて進んで行く姿が描かれる。ワッツもオーストラリアから
ハリウッドに夢を抱いてやってきた一人、実際の彼女はかな
り恵まれていたようだが、それでもこの作品には彼女の実体
験に基づく部分もあるようだ。
最初のエピソードでは、一つのオーディション会場から次の
会場までフリーウェイの道中で、車を運転しながら次の役柄
に合わせて化粧を変え着替えもしてしまう。そんなアクロバ
ティックな様子が微笑ましくもあり、これが映画祭で好評を
博した理由もよく判る。
その後も、同棲中の男性の浮気や、女性セラピストとの怪し
げな関係、また「こんなことメリル・ストリープがやったと
思う?」と言いながらも続けるこれまた怪しげな演技の講習
会など、ハリウッドの真実(?)がここに綴られて行く。
もちろん誇張もあるのだろうが、動物園の類人猿の檻の前で
行動を観察しているシーンには『キング・コング』の参考か
と思わせたり、怪しげなホラーのオーディションのシーンに
は『ザ・リング』を想像させるなど、実話とのつながりも上
手く感じさせてくれる。
その一方で、R指定は免れたようだが、かなり際どいシーン
も出てくるし、またキアヌ・リーヴスのカメオ出演や、久し
ぶりのチェビー・チェイスがエージェント会社の幹部を演じ
て、軽妙な演技を見せてくれるなど。いろいろ楽しめる作品
でもある。
作品自体はSDのディタルヴィデオで撮影されたものであり
ながら、内容はかなり凝っているし、それでいてインディー
ズの匂いをたっぷり感じさせてくれる。ワッツは製作も担当
しており、自らのハリウッドへの思いをここに描き込んでい
るようだ。

『16ブロック』“16 Blocks”
『リーサル・ウェポン』のリチャード・ドナー監督、『ダイ
・ハード』のブルース・ウィリス主演によるアクションドラ
マ。

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08月10日(木)
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