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On the Production
by 井口健二
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■ミートボール・マシン、キャッチボール屋、グエムル、セプテンバー・テープ、ザ・フォッグ、鬘、ニキフォル、日本以外全部沈没
ることにし、化学療法で頭髪を失った彼女に、長い黒髪の鬘
をプレゼントする。そして、その鬘を着けた妹は、見違える
ように元気を取り戻して行くが…
日本でも以前から韓国製ホラー映画の公開はされているもの
だが、日本で韓国映画というとやはり恋愛映画が中心になっ
てしまう。しかし海外での評価は、アクションとホラーが断
然リードしているものだ。そんな韓国製ホラーの一篇。
韓国製のホラー映画というと、小道具をうまく使っている印
象を持つが、今回は小道具の最たるものとも言える鬘が鍵を
握る。鬘というのは、元々が人の頭髪を使って作られていた
など、怨念が溜まりやすそうなものだが、本作もその辺をう
まく利用したものだ。
しかし本作では、その怨念の矛先が判り始めた辺りからちょ
っと物語が混乱と言うか、そうであるならちょっと描き方が
違うのではないかという感じがしてきた。
映画の発端で鬘を作るシーンが出てきてそこに帰着して行く
のは良いのだが、途中の展開がこれでは巻き込まれる人たち
が浮かばれない感じだ。確かに怨念というのは、過去の作品
でも無差別攻撃的に描かれることが多いが、やはりちょっと
違うような気がする。
それが貞子のように、もっと社会に対する怨念みたいなもの
なら理解もするところだが、本作の場合は個人的な恨みが発
端であるし、確かに社会的な差別を受ける可能性のある設定
はあるが、映画にはそこまでは描かれていなかったようだ。
東洋の女性にとって黒髪は特別の意味を持つ感じがするし、
また見た感じも金髪などとは違ったイメージの湧くものだ。
そんな黒髪の美しさは見事に描かれている。しかも主演女優
がその頭髪を剃って撮影に臨んでいるのも、特別な感じを持
ってしまうところだ。
『ニキフォル』“Moj Nikifor”
1895年から1968年までの73年間の生涯をポーランド南部の町
クリニッツアで暮らし、約4万点の作品を残したと言われる
画家ニキフォルの晩年を描いた作品。
物語の始まりは1960年。クリニッツアの役所の管理部で美術
担当のマリアンは、自分のアトリエに居座ってしまった老画
家に手を焼いていた。その老画家ニキフォルは、天衣無縫に
絵を描き、画家でもあるマリアンの作品に駄作だと言い続け
る。しかし、自分の才能の限界に気づいているマリアンは、
それに返す言葉もない。
そんなある日、マリアンは大都市クラクフの文化省に栄転の
決まった上司から同行を求められる。願ってもないチャンス
に妻や家族は大喜びだったが、マリアンはニキフォルのこと
が気掛かりで行くことを躊躇してしまう。そして老画家の戸
籍を確定するため奔走するマリアンだったが、やがて老画家
が肺結核の末期だということを知らされる。
この事態に、役所は老画家をアトリエから追い出し、マリア
ンは自分が保証人となって療養所に老画家を入院させること
になる。そして家族はクラクフへの引っ越しを求めるが、マ
リアンは退院までそこにいることを主張、家族は別れて妻の
実家へ引っ越してしまう。
やがて退院を出迎えたマリアンは、老画家をワルシャワで開
かれた個展につれて行くが…
実際にニキフォルは、1960年代にはアメリカで注目され、晩
年は自ら「高名な画家ニキフォル(Nikifor Matejko)」と
署名する程だったということだが、当時は社会主義国家のポ
ーランドで、その実体はほとんど紹介されなかったようだ。
そんなニキフォルの晩年を支えたのが、マリアン・ヴォシン
スキという人物で、この物語はその実話に基づいている。
因に、水彩や色鉛筆で1日3枚ずつ工場生産のように描かれ
たというニキフォルの絵は、映画の中でも何点か紹介されて
いるが、作風自体は素朴なものの味わいが感じられ、特に色
彩の豊かさには感銘を覚えた。
なお、映画の中でニキフォルを演じているのは、1920年生ま
れのクリスティーナ・フェルドマンという女優で、85歳の女
優が70歳の男性画家を演じているものだが、その風貌も含め
た見事な演技にも感銘した。
『日本以外全部沈没』
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07月20日(木)
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