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On the Production
by 井口健二
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■マッチ・ポイント、DEATH NOTE、夜のピクニック、カーズ、キンキー・ブーツ、いちばんきれいな水、フラガール
ことで、こういう新しいことに挑戦する活力があると言うの
は素晴らしい話だ。それを言い出すと、また、他の作品も挙
げなければならなくなるが、イギリスにはそんな活力も再生
して来ているようだ。
お話自体は、起死回生の逆転を狙って奮闘するだけのことだ
し、過去にもいろいろある展開だろう。ただ、そのテーマが
ちょっと過激という程度かも知れない。でもほのぼのとした
人情と暖か味のある笑いは、ほっとする心地よさももたらし
てくれた。
主演は、新『スター・ウォーズ』でオーウェン・ラーズを演
じていたジョエル・エドガートン。彼はオーストラリア出身
だそうだが、その脇を新進からベテランまでのイギリスの演
技陣が固める。そのアンサンブルも良かった。
『いちばんきれいな水』
漫画家・古屋兎丸原作の映画化。主演は加藤ローサと『仄暗
い水の底から』の菅野莉央。監督は、ミュージックヴィデオ
やCFを数多く手掛け映画は初のウスイヒロシ。
物語の主人公は、8歳の時から11年間眠り続けている姉と、
12歳の妹。その姉が、両親が急用でいない間に突然目覚めて
しまう。しかし姉は19歳の身体でも精神年齢は8歳。そんな
姉を、中学受験を控えて塾の夏期講習も真っ最中の12歳の妹
が世話することになるが…
加藤の主演作品では、すでに『シムソンズ』を見ているが、
撮影順では本作が初主演作になるようだ。上映前の記者会見
で、本人は一番演じやすかった役と言っていたが、新人とし
てはまずまずの出来だろう。それに本作では菅野の演技も目
を引くところだが、いずれにしても見ていて引っ掛かるよう
なところはなかった。
それに対して物語は、ちょっとこじんまりとまとまり過ぎて
いる感じが否めない。恐らく原作はもっとシンプルなのだろ
うし、シンプルさゆえに評価も高いのだろうが、映画的な感
動を呼ぶにはちょっと物足りない感じだ。
そのためには、題名でもあり、キーワードとなる「いちばん
きれいな水」の存在が、もう少し何かドラマティックに描か
れても良かったように思える。
確かに、後半のこの場所に関わる展開はドラマティックでは
あるのだが、その存在そのものがもっとドラマティックであ
っても良かったはずだ。それに、この後半の展開は、姉にと
っては昨日のこととして覚えているはずなのに、その辺の扱
いが曖昧な感じもした。
現代の都市の近郊を舞台にファンタシーを描くことは難しい
が、この作品のように一種の都市伝説みたいなものを題材す
るのは魅力的に感じられた。そのシチュエーションをもっと
明確に描ければ、ここでいろいろな素敵な物語が生まれるよ
うにも思えた。
原作がどのような展開をしているかは知らないが、映画のオ
リジナルででも、この「いちばんきれいな水」のシチュエー
ションを発展させた別の物語が作れれば面白い。そんなこと
も考えてしまった。
『フラガール』
常磐ハワイアンセンター(現スパリゾート・ハワイアンズ)
の誕生を描いた実話に基づく作品。
物語の背景は昭和40年。江戸時代末期に開山し、朝鮮戦争の
時代には黒いダイヤとも呼ばれて、日本の戦後復興を支えて
きた常磐炭鉱。しかし、30年代後半のエネルギー革命で燃料
の中心は石油に代り、本州最大と言われる常磐の山も閉山が
続いていた。
そんな中、当時1トンの石炭を掘り出すのに40トンの温泉を
捨てていたと言われる常磐炭鉱は、その温泉を利用したリゾ
ート施設を企画。そこを炭鉱を解雇された鉱夫やその家族た
ちの再雇用の場とすることを計画する。
そしてその施設の目玉となるハワイアンショーのフラダンサ
ーを、鉱夫の娘たちから募集することにしたのだが…その説
明会場で見せられた腰蓑姿で踊る女性の映像に、応募者の大
半は退席、かろうじて残ったのは4人だけだった。
フラの教師は、元SKDで8ピーチェスのメムバーだったと
いう女性。しかし彼女も東京で食いつめた末の都落ちで、し
かもど素人の応募者たちの拙い踊りを見せられては、やる気
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06月14日(水)
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