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On the Production
by 井口健二
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■トランスアメリカ、ロンゲスト・ヤード、アンダーワールド・エボリューション、間宮兄弟、RENT、ナイロビの蜂、セキ★ララ
受ける。
しかしその質問自体がイレギュラーで、他の記者たちの失笑
を買った女性は、記者たちが退席した後に一人残されてしま
う。そんな女性に声をかけた主人公は、瞬くうちに深い関係
となり、赴任先がケニアになったとき彼女は彼と共に任地に
行くことになるが…
彼女の身に一体何があったのか、彼女はその奥地で何をして
いたのか。そして彼女は、本当に彼を愛していたのか。謎は
謎を呼び、主人公は自分が彼女のことを何も知らなかったこ
とに気付かされる。
名作『寒い国から帰ってきたスパイ』を始め、ル=カレの描
くスパイは、007に代表される華麗な活躍からは程遠い、
地道なしかし国際政治の中で重要な役割を果たす現実的な姿
で描かれる。本作もそのような背景が見え隠れする作品だ。
ル=カレの原作では、2001年に『テイラー・オブ・パナマ』
が原作者本人の脚本製作で映画化されているが、どちらかと
言うと佳作に属する前作に比べて、今回は物語の舞台も、背
景も極めて壮大なアドヴェンチャー作品だ。
中でも、大きな舞台の一つとなるスラム街のシーンは、実際
に現地に入って撮影されたもののようだが、その映像はさす
がに『シティ…』の監督と納得させられるものだった。
しかもその撮影を、ケニア政府の協力の下に行っているのも
凄いところだ。因に、原作本はケニアの政治的腐敗を描いて
いるために発禁本なのだという。それでも協力が得られたの
は、描かれているアフリカの抱える悲劇に、ある種の共感が
得られたからのようだ。
昨日付けで、セネガル映画の『母たちの村』を紹介したが、
この作品もまた違った面でアフリカの悲劇を描いたものだ。
ただし、セネガルの作品が実話に基づくのに対して、本作は
あくまでもフィクションだが、でもこのような悲劇がないと
は言い切れないものだ。
今年は正月の『ホテル・ルワンダ』から、アフリカを題材に
した作品が連続しているが、遠い国ではあっても、やはり注
目していなければならない問題ばかりという感じだ。

『セキ★ララ』
韓国人、朝鮮人、中国人のアダルトヴィデオ俳優を題材にし
たドキュメンタリー。監督の松江哲明は、自身が在日韓国人
という立場で、在日韓国人問題を描いて来ているようだ。そ
の新作は、実はアダルトヴィデオとして製作されたものであ
るが、その内容は見事なドキュメントになっている。
全体は2部構成で、その前半は韓国名金紅華、芸名相川ひろ
み、自称20歳が子供の頃を過ごした京都と尾道を訪ねる様子
が描かれる。もちろんAVであるから、男優との本番シーン
も挿入されるが、全体的には在日韓国人としての自身の環境
が語られるものだ。
これに対して後半は、朝鮮名柳光石、芸名花岡じったと、中
国名張心茄、芸名杏奈が登場し、花岡が親との確執を語る一
方、来日1年半の杏奈は、中国に住む親のことも話しはする
が、重点は花岡に置かれている。
そして全体は、在日という立場のことや、家族への想いなど
が語られるが、特に家族に関する言及が多いことは意外なほ
どだ。恐らく今の日本人の同年代の人に同じ質問をしても、
こんなに語られるかどうか、そんな在日の人たちの姿が描か
れる。
ピンク映画のドキュメンタリーでは、昨年業界を題材にした
『ピンクリボン』を紹介しているが、それとは全く違って、
本作は人間、あるいは民族を描いている。実は、ピンク映画
で人間を題材にしたセミドキュメンタリーも見たことがある
が、本作は全体が真摯で見ていて気持ちが良かった。それに
何より作家の暖かい視線が伝わってくる。
もちろん、彼らは日本人ではないし、そのことを彼らも判っ
ている。実際にそれでいじめにもあっているようだし、不満
足な面もあるのだろう。でもその中で人間として生きている
姿は、日本人もきっと同じなのだと思いたいが、今世間で見
られる日本人よりは真っ当なようにも見えた。
特に、家族への想いと強くありたいという気持ちが日本人よ
り強く感じられ、何か日本人が忘れてしまったことを、教え

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03月31日(金)
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