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On the Production
by 井口健二
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■Vフォー・ヴェンデッタ、ファイヤーウォール、SPIRIT、ブラッドレイン、ククーシュカ、南極物語
そして現地のサーミ人の女性の織り成す物語。
2002年のロシア映画で、同年のモスクワ国際映画祭では監督
賞、主演男優賞など5部門を受賞したということだ。
第2次大戦中、フィンランドはドイツと同盟を結び、以前に
ソ連に奪われた領土を奪還するため、ラップランドでの闘い
を繰り広げていた。
そんな第2次大戦も末期の頃。主人公のフィンランド人青年
は、大学から学徒動員されてラップランド戦線で狙撃兵とな
っていたが、反戦思想の持ち主であったために他の兵士たち
によって岩に鎖でつながれ、わずかな食料と共に置き去りに
されてしまう。
対するロシア人の兵士は、彼も反戦的な通信を送ったことを
疑われて本部に護送中だったが、友軍機に誤爆され、護送し
ていた上官と兵士は死亡、彼だけが重症で生き存える。
そしてそんな戦場のラップランドで、徴兵された夫の留守を
護り一人で暮らしてきた女性が、最初にロシア人の兵士を発
見して自宅に連れ帰り、看護を始める。一方、鎖を逃れた青
年も援助を求めて女性の家にたどり着く。
こうして3人の生活が始まるのだが、フィンランド語しか話
せない青年と、ロシア語しか話せない兵士、それにサーミ語
しか話せない女性の間では、言葉によるコミュニケーション
は全く出来ず、わずかにジェスチャーのみで意志を通じさせ
ることになる。
しかもいろいろな誤解が、特に2人の男性の間では確執とな
るのだが、一方の女性は、実は夫が徴兵されてから4年間を
男なしに暮らしていたのだった。こんな3人の間での可笑し
くも悲しい物語が展開する。
もちろん反戦思想が色濃く打ち出された作品ではあるが、そ
こにはもっと根元的な人間が生きることへの賛歌のようなも
のが歌い上げられている。それはリアルなサヴァイヴァルで
あったり、ある面ではファンタスティックであったりもする
が、それらが見事に融合して物語を作り上げている。
特に、前半のリアルから後半のファンタスティックな展開へ
の移行の巧みさが見事に作品の完成度を高めているものだ。
また、四季を通じてのラップランドの大自然の美しさも見事
に写し出されていた。
なお題名は、ロシア語で鳥のカッコウの意味だが、狙撃兵の
隠語でもあるようだ。それともう一つ別の意味も含まれてい
る。

『南極物語』“Eight Below”
1983年に公開されたフジテレビ製作『南極物語』のハリウッ
ドリメイク。
クレジットでは、Suggested by the Film:“Nankyoku Mono-
gatari”と表記され、当時の蔵原監督の名前も掲げられてい
たようだ。
オリジナルは1958年の南極越冬隊での出来事を描いたものだ
ったが、今回は物語の背景を1990年代とし、数あるアメリカ
の基地の一つで起った物語としている。天候の急変によって
犬を置き去りにしなければならなかったという物語は変えら
れないが、現代にマッチさせるためにはこの程度の改編は仕
方がないというところだろう。
そして主人公は、全米科学財団の南極基地に駐在しNo.1と言
われる山岳ガイド。その基地に隕石調査の学者が現れるとこ
ろから物語は始まる。その調査地は先陣争いのために学者の
到着まで曖昧にされおり、その学者が告げた目的地は主人公
が当初聞いていた方角とは違うものだった。
しかし上司の命令でガイドを引き受けた主人公は、氷の状態
を判断して8頭立ての犬ぞりを使うこととし、目的地である
メルボルン山に向かう。ところが現地に到着した直後に天候
の悪化が報告され、基地には放棄脱出の命令が伝えられる。
この事態の中、ぎりぎりの調査で成果を得た主人公たちは基
地への帰還を開始するが、アクシデントで帰還が遅れ、基地
に着いたときには天候の悪化が始まってしまう。そしてまず
怪我人のいる人間の避難が優先され、後続便で犬を運ぶこと
が決められるが…
凍傷で意識を失った主人公が目を覚ましたときには、後続便
が飛ばなかったことが明らかにされる。
一方、基地の残された8頭の犬たちは、最初はただ飛行機の
飛び去った方角を見つめているが、やがて人間が戻ってこな

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02月28日(火)
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