ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■シャークボーイ&マグマガール3-D、春が来れば、あぶない奴ら、タブロイド、美しき運命の傷痕、リトル・ランナー、PROMISE
ただし、監督の前作がどうしようもない絶望で終わるのに対
して、本作には多少の救いが感じられること、つまり3人の
姉妹がそれぞれ前向きに地獄を乗り越えることができそうだ
と感じさせるところは、後味の良い作品ではあった。   
                           
『リトル・ランナー』“Saint Ralph”          
コーマに陥った母親を目覚めさせるために、ボストンマラソ
ンに挑戦しようとする14歳の少年の姿を描いたドラマ。  
時代設定は1953年。カソリック系の私立校に通う主人公は、
問題児というほどではないが、喫煙したり、神を冒涜する言
葉を繰り返したり、さらに自慰に耽ったりで、品行方正とは
言い難く、厳格な校長からは目を付けられている。    
そんな彼にさらなる問題が発生する。長く入院していた母親
が突然コーマに陥ってしまったのだ。そして医者には、母親
を目覚めさせるには奇跡が必要だと言われてしまう。そこで
少年は自ら奇跡を起こすべく行動を始めるのだが…    
宗教的なことが被るので多少判り難いところがあるが、結局
のところ、聖人が奇跡を起こすと、それに伴っていろいろな
ことが起きる。それが奇跡と言うものらしい。だからこの物
語では、少年が奇跡を起こせば、お母さんが目覚めるかも知
れないと言うことなのだ。               
そして少年が目指したのは、ボストンマラソンで史上最年少
の優勝を果たすこと。これが実現したら正しく奇跡というも
のだろう。しかも彼は、あるきっかけで神の啓示を受けたと
信じ込み、それに邁進して行くことになる。       
ということで、1950年代のそれなりに純真なミッションスク
ールの少年には、あってもおかしくはないお話という展開に
なる。                        
実は、試写会の前に舞台挨拶があって、その中で脚本監督の
マイクル・マッゴーワンはこの物語が出来た経緯について、
最初に14歳の少年がボストンマラソンで優勝するというアイ
デアを思いつき、それからそこに至る道筋を考えたと話して
いた。                        
正に本末転倒だが、まあ物語の成立というのは、えてしてそ
んなものだろう。そして本作では、最初に思いついたアイデ
アもさることながら、そこに至るように考えられた道筋(展
開)が実に上手くできていて、この映画を素晴らしいものに
している。                      
因に監督は、デトロイトマラソンでの優勝経験や、東京シテ
ィ駅伝にカナダ代表チームのメムバーとして出場したことも
ある元長距離ランナー。従ってアイデアは、単純にそこから
出てきたものと思われる。               
しかしその後、彼はカナダのテレビ界に転じて、子供向けの
アニメーションシリーズや、コメディシリーズなどの演出家
としても知られており、映画の全体にはその演出家としての
才能が発揮されているようだ。             
なお物語は、単純にはスポ根もののように展開するが、実は
最初は独学で始めた主人公が怪しげな精神論で書かれた古い
教習本を手に入れて実践したり、コーチをしてくれる神父が
ニーチェ被れでトラブルが起きるなど、いろいろ皮肉たっぷ
りな部分もある。                   
多分、配給会社は感動で売りたいだろうし、実際に見れば感
動する物語ではあるが、上記のように、それ以上にいろいろ
考えさせられるところもあって面白い作品だった。    
それから、主演したのはテレビ出身の若手だが、その回りを
『チャイルド・プレイ』で花嫁役のジェニファー・ティリー
や、『シャル・ウィ・ダンス』で夫婦の娘を演じたタマラ・
ホープ。さらに、『シッピング・ニュース』のゴードン・ピ
ンセット、『アンダーカバー・ブラザー』のショーナ・マク
ドナルドら、いずれもカナダ生まれのちょっと捻った配役も

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12月13日(火)
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